偶像
「これで、最後だ」
最後のレバーを引く、人形の頭のパーツが手に入る、そして、俺から何かが、何か、が? 何が? あれ? 何を?
「いけネェ、感覚の半分が吹っ飛んで混乱状態だ」
こんらん? はんぶん? なにをいってる、おれは、ちゃんと、これを
「頭の機能も半減サ、早いとこ正気にならねえと」
しょう?
「はーい!! 無謀な有象無象のみんなー!! 私が来たよー!!」
ひかり、おと、きれい。
「まさか、あれが!?」
ひと、ひかりをせおう、ひと、きれい
「そこでどろどろになってる君!! 私が君の目的!! 完全なる人形、万人を愛する人形、最高傑作のアイドールちゃんだよ☆」
あい、どーる?
「愛する人形たァ、ご大層なもんだ」
「あれぇ? さてはアイドールちゃんのファンじゃないなー? えーい☆」
きれい、きらきら、あっちに、いきたい、きっと、たのしい
「さあ!! アイドールちゃんのファンになりなさーい!!」
ふぁん、なに? でも、きっと、たのしい
「シンの旦那!! そっちに行っちゃあおしまいだ!!」
くち、かってにうごく、いやな、きもち
「やだ」
じゃまする、いやだ、あっち、いく
「畜生!? このままじゃ」
「ファン第一号のごあんなーい☆」
あまい、においが、する、これは、なつかしい、におい、これは、たしか
「ラァ」
「おにぃいいいいいさまぁあああああああああ!!!!!!!!!!!!」
振動、そして濃密な香り、思い出した、ラァの匂いだ。
「旦那!! 戻って来たのかィ!?」
俺は今喋れない、ラァがここに到達した以上バレたら終わりだ。今から体の主導権をお前に引き渡す。好きに動け。俺の身体は極力覆え、良いな?
「合点!!」
「お兄様は!? ラァのお兄様は!? 感じました!! 今確かにお兄様の声の振動を!! 死んでなかった!! お兄様は生きていた!! どこですか!! どこにいるのですか!!?」
最上階に上がってくるなり、俺を探して2体の人形はほったらかしか、我が妹ながらもう少し周りを見た方がいい。
「飛び入りだね?でも、君は資格がない。人形を完成させたのはそこの人だから、君には待っててもらうよ☆」
5体の人形が現れた、それぞれ違う色で塗られた法被を羽織っている。それに、手には光り輝く棒、あれで攻撃するのか?
「万が一、アイドールちゃんの親衛隊を倒せたら認めてあげなくもないぞ☆」
「我ら」
「アイドール親衛隊」
「不躾な者に」
「礼儀を叩き込む」
「騎士である」
ポーズを決める五人の騎士、絶妙にダサいな。
「おにいさまー!! どこですかー!!」
こんなに濃い奴らが出てきたのにガン無視とは恐れ入る。
「妹御、大丈夫かネェ?」
大丈夫だ、俺の妹だぞ。
「左様で」
「うーん、無視なら死んでね☆」
ラァに向かって5体の人形が襲いかかる、やっぱりあの棒は熱で焼き切るタイプの武装らしい。まあ、そんなものがラァに効くわけもない。
「なに? ラァの邪魔をするの?」
ラァの瞳がようやく敵を捉えた。これであいつらは終わりだ。
「壊れて」
「がっ!?」
「ぎっ!?」
「ぐっ!?」
「げっ!?」
「ごぉっ!?」
内側に潜り込んだ砂糖が固体化して貫いたな、人形の隙間なんて入り込むのに数秒も要らない。内側から串刺しになるのは痛そうだが、人形だから良いだろう。
「……あなたも邪魔するの?」
「すごいね☆ 言ったからには認めるよ。君もアイドールちゃんに挑む権利をあげる☆」
「そんなの要らない、お兄様はどこ?」
「ふふふ☆ 勝ったら教えてあげるよ☆」
「そう、じゃあ早く負けて」
アイドールに粒子が殺到する、これを防ぐ術がなければ終わりだが。ダンジョンの最奥にいる奴がこの程度で倒せるのかという思いもある。でも、ラァだしなぁ。ストレートで突破してしまう可能性を否定できない。
「さっきと同じ手だね☆ 衣装変更・天愛」
光が!? こいつずっと光ってんな!!
「面倒くさいね、それ」
「あはははは!! 天使スタイルだよ☆」
「見た目だけ、それで天使だなんておこがましい。天使っていうのは、内側から光が溢れるんだよ?」
「内面の光なんてナンセンス、見える光だけが本物なの☆」
白い御衣に翼に輪っか、ステレオタイプの天使だな。コスプレと言えばそれまでだが、さっきまでとは一線を画す雰囲気を纏っているのも確かだ。
「見えるってことはね、干渉してくるってことだよ☆ アーガペービーム!!!」
「っ!?」
いや、ハート型の光線とか正気か!? どうなってんだ!?
「ラァの砂糖が溶けるくらいの熱なんだ……へぇ?」
「アイドールちゃんの愛はもっともっと降り注ぐよ。いつまで耐えられるかな☆」
【16式自律人形・デウス】
愛を受けるのではなく、愛を与える人形。それは本来人形に与えられるには重すぎる役目。しかし、彼女はやりとげた。人形の身でありながら、愛することを獲得した。愛する対象は自分の信奉者、たとえそれが洗脳による隷属であっても彼女は最高最強の偶像になることを諦めない。それが無理だと分かっていても彼女は止まらない。




