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糖妃降臨

 理解する。ということは、時間をかけて行う事もあれば、瞬間で理解するものもある。これは、圧倒的に後者だった。今まで微かに感じていたものが、一気に濃くなる。それは香り以上の存在感、血のつながった者特有の感覚。


「……来たか」

「何が来たってェ?」

「ラァだ。妹が、この塔のすぐ近くまで来た」

「ああ、なら急がないとナ。とはいえ、シンの旦那と同じ事をするんだ。そうそう上がってはこられないと思うがネェ」

「俺には分かる、このギミック程度でラァは止められない。俺は今足と腕を封じられた状態で戦闘するのがかなりキツいが、ラァはたとえ四肢を本当に切り落とされても、目を潰されても、耳を塞がれても、何も問題が無い。全力戦闘が可能だ」

「妹御は化け物か何かで?」

「あ゛あ゛?」


 聞き捨てならねえ。ぶち壊すかこの木偶。


「今のは失言サ。取り消す」

「……次はないぞ」

「くわばら、くわばら……口は災いのなんとやらだ」


 全く、人の妹を化け物呼ばわりしやがって。


「で、なんでそんな芸当が可能なんですかィ」

「ラァの砂糖は万能だ、索敵攻撃防御なんでもござれ。加えて粒子、液体、固体にまでなる。逆に何ができないのか聞きたいくらいのものなんだよ」

「はー、そりゃあ羨ましい限りで」

「全くだ、だから。うおっ!?」


 地震か!? 


「こりゃあ……人形工房全体が揺れているみたいだネェ」

「ラァがやったか……あいつ結構ものぐさだからな。外から大穴あけてショートカットしようとしたんだろう」

「なかなか豪快なお人だ……」

「ラァでも流石に人形工房を壊すのは無理だろう。外から無駄な攻撃をしているうちに上る。今から降りて外に出るよりは、その方がまだ分の良い賭けだ」

「なら、あと二階最速で行きやしょう」


 人形工房の第三、そこは人形の胴体を求める場所。俺から奪われたのは胴体の機能半分。


「ぜぇ……ぜぇ……おいおい……冗談だろ……内臓の半分が、機能停止とか、ろくに、動けやしねぇ」

「その代わり、ここの敵は胴体がネェ。砕くのは簡単サ」

「動けねえって言ってんだろ……はぁ……はぁ…声を荒げるのも……キツいんだぞ……」

「分かってるサ、だからあてを使っておくれ」

「……?」

「動きを合わせるのはあてがやる、シンの旦那は思いのままに動けばいいサ」

「どういう……?」

「こういう事サ」


 カタハがまたバラバラに……そして、俺の身体に鎧のように装着された?


「外骨格……か」

「ご名答、あての義肢でシンの旦那を動かす算段だ」

「そんなこと、できるのか」

「ははは、初めてサ」

「ぶっつけ本番かよ!!」


 アルカを持つ手に力は入らない、それでも持てる、それでも振れる、すげえ気持ち悪いぞこの感覚。それでも動く、それならやれる。


「動くなら、やるしかネェ!!!」


 ん? なんかイントネーションがおかしいような。まるで、カタハみたいな。


「お? こいつァすごい、あてとシンの旦那が混ざっちまった」


 口が勝手に動く、なんじゃこりゃあ!?


「カタハ!! なんだこれェ!!」


 精神同調? 融合? どういう状態だ!?


「あても分かりやせん!! 初めてだもんで!!」


 くそっ、今は良い。人形の手足、頭が無数に襲ってきやがる。


「だぁああああああ!!! 気持ち悪ィイイイイイイイイイイイイ!!!」


 アルカを振る、振る、振る、全部が動きを止めるまで動き続ける。外骨格で動いている分負担はほとんどない。俺の身体能力以上の出力で外骨格が動いているからか【熟練工】の導きも冴えている、ような気がしてきた。俺の身体以上っていうのが、なんだか悲しい。


「……これで、終わりだな……」


 動く者はもうない、手元には頭のない人形が一体。


「あと一階サ、終わりが見えてきた。最上階にはあての目的と、宝物庫がある」


 そうかよ、もうそろそろ俺の限界も見えてきているんだけどな。


「シンの旦那、今こうやって動かしているから分かった。本当に、天賦はないんだネェ」


 最初からそんなことは分かってる、それでもなんだ。


「だから、あてがシンの旦那の天賦になるサ」


 俺の天賦に?


「あてが動きを足せば、力は2人分以上。1人で2人分以上の動きができればそれは天賦の才能を覆す力になるサ」


 ……俺の力になってくれるってわけだ


「もちろん、あてを使ってくれればこれ以上の喜びはないネェ」


 それは……


「っ!?」


 真下から震動!? もう来たか!?


「相談している暇はない、さっさと攻略して逃げるぞ!!」


 思った以上にラァの攻略が早い!! 攻略が終われば飛んで逃げる選択肢ができる、それに賭けるしかなくなった。


「さあ、本物って奴を見にいこうかネェ」






















【人形具足】

抱くように絡みついた義肢が肉体の動きを補助する外骨格。本来であれば他者の肉体を支柱として乗っ取るための寄生攻撃である。それがどうしてこのような形になったか、言葉にすれば陳腐だが、人形が獲得した事は真の偉業と言えよう。

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