一階は闘技場
「信じられねえ……、なんで入るのに戦闘が必須なんだ」
「ん? なんだお前知らねえで来たのか。それなら早く帰った方がいい、ここは赤盾灯台。戦士の聖地のひとつだぜ」
親切なスキンヘッドのお兄さんだな、忠告だけでなく説明まで。
「ありがとうございます。でも、今更戻れないので」
「そうかい、何か背負ってんだな。細かいことは知らねえが、塔の中で会おうぜ」
「はい、お互い頑張りましょう」
広い円形の闘技場に数人が入れられている構図か、これなら周囲の壁が開いて猛獣が出てくるっていうのが定番になりそうだ。
「カァ」
「……下か」
ヤタ・デシュが下を見て鳴いた、このタイミングで無意味なことはしないだろう。なら、敵は下から来る可能性が高い。
「地面からなら、迎撃できるかもな」
桜腕を地面に突き立てる、根を思いっきり張ることで相手を見つけ出す。
「いた」
急上昇する振動を感じる、やはり下からか。
「出てこなくて良い、ずっと地中に居てくれ」
根で絡めて……
「あ、無理だ。下から来るぞ!! 防御しろ!!」
全然パワーが足りない、これは普通の獣じゃないな。何か特別な奴だ。今できるのは周りの人に危険を伝えて飛び退く事くらいだった。
「グモォオオオオオオオン!!!」
咆哮と共に姿を現したのは、熊と土竜を足したような謎の生き物。そのモグラグマが敵意を持ってこちらを見ている。
「こいつを倒せば良いのか」
未知数の相手に対してどう対応するか、様子見かあえての全力殲滅か、それは意見が分かれるところになる。
「慎重に行くか」
俺の間合いは近距離じゃない、モグラグマは明らかにパワータイプ、なら距離を取って小手調べをするのがいいだろう。
「お前が赤盾の悪魔か!! この時を待ってたんだ!!」
1人が斧を振りかぶって突撃する。すごい度胸だと思う。できればあいつが実力者で、一撃で終わらせてくれれば良いんだけど……
「グモッ」
「ぐわああああああああああああ!!?」
「おーっと!! 1人がなぎ払われました!!」
ダメだったか……右腕でなぎ払われてしまった。壁まで一直線に飛んでいったのを見るともう戦線復帰はできないだろう。
「くっ、やられたか!! だが、まだこれからだぞ」
「おうっ!!」
良かった、これで戦意喪失されていたら護りながら戦うことになるところだった。誰かを護りながら戦うなんてことは経験がないから困る。
「前衛は任せます、俺はここから攻撃を」
「何言ってんだ!! 遠距離攻撃ができるようなもの持ってるのか!!」
「これです」
「剣じゃねえか!! どうするってんだ」
「こうします」
アルカを抜き、刃を伸ばす。
「気持ち悪っ!? なんだその剣!!」
「家宝です」
「家宝か……なら仕方ない」
咄嗟に家宝と言ったら、通じてしまった。これからアルカの説明をするときは家宝ですと言って通す事にしよう。
「これならここからでも届きます」
【熟練工】の導きに従ってアルカを振るう、横薙ぎに向かって振るうと巻き込んでしまうから縦、もしくは突きが良いだろう。
「食らえ!!」
選んだのは突きだ、正面から貫いてしまうのが最も速い。それに縦振りをしている間に距離を詰められるのは避けたい。
「グモオン!?」
「刺さった、あれ?」
当たった、当たったのだが、抜けない?
「あ、まずいですねこれ」
「グモオオオオオオオオオオオオオン!!」
「ぐっ!?」
身体の中に残った刃が、引っかかって、抜けないのか、パワーの差で、振り回され、る。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!?」
「グモオオオオオオオオオオオオ!!!」
「おーっと、妙な武器を使ったが効果は薄いか!!」
実況がうざいな!!
「手を離せ!! そのままじゃ引きずられるだけだぞ!!」
「アルカを、手放す?」
そんなことはあり得ない、そんなことをできるはずがない。
「これでいい、ここから一手であいつは倒せるんだ。動きを止められれば」
ふんばれ、桜腕を伸ばしてアンカーにしろ、一瞬でも止まればそこから動ける
「くそっ、信じるぞその言葉!!」
各々が手に武器を持って、モグラグマに向かって行った。攻撃は命に届かずとも、気は散る。
「止まった!!」
足でしっかりと地面を踏む、桜腕で重量と筋力を補助。後はアルカを信じて、思いっきり振り抜くだけだ。
「切り裂けええええええええええええええ!!!!」
「グモオオオオオオオオオ!?」
刺さった場所からアルカが抜ける、その方向は上。傷口を広げながら真上に向かって飛ぶ。結果としてモグラグマの上半身が大きく裂けた、致命傷だ。
「赤盾の悪魔が沈んだぁああああああああああああああああああああああ!!!! 決着!! 決着ぅうううううううううううううううううううううう!!!!!!」
実況、本当にうるさいな。
【モグラグマ】
グモッ、グモグモ、グモモ、グモォオン!!




