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翼落とす黒

「シンさん!? どういうことですか!!」

「よく分からんけど、お前の盾の使い方はただ身を守るだけじゃないみたいだぞ!!」


 まさか俺もこんなこと分かるとは思ってなかった、他人の固有能力まで【熟練工】の効果範囲だとは。


「何かをしようと言うのか? ならば我の力の片鱗も見せようではないか」

「片鱗? いてぇ!!」


 なんか、目の前に見えない壁がある。


「これ……入る時にあったやつだな」

「左様、そもそもここを覆う結界は我らが力によるもの。ここから先自由に飛ぶことなど許さぬ」

「くそ、障害物競走かよ」


 そこかしこに見えない箱みたいなものがありやがる、スピードが乗ったときに激突したら結構なダメージになるぞ。迂闊に動けなくなった。


「そして、当然このようなこともできる」

「嫌な予感……うぐっ!?」


 箱が直接直接来たか、幸い一撃で死ぬようなものではないが。何発も食らえるものでもない。


「予定変更だ、早く覚醒してくれ」

「無茶を言わないでくださいよ!!」

「いや、早くどうにかしないとまとめて死んじまうぞ」

「く……!!」


 お、箱を防いだか。まぐれかもしれないがありがたい。


「その意気だ、頑張ってくれ」

「頑張るにも限度があります!!」

「そう言うな、やればでき、ぐあっ!?」


 腕に見えない箱が激突した、まずい、握力が死ぬ、ラウンを、落とす。


「あ、落ち」

「とどけぇえええええええええええええ!!!!」


 桜腕をめいっぱい伸ばしてラウンを回収……する!!


「届いた!! すまん!!」

「あ、あぶ、死、死ぬかと」


 この高さなら確実な死が待っていただろう、さすがに震えている。このままだと心が折れて戦闘どころじゃないか。なら、励ますしかない。


「少しくっつくぞ、嫌だろうが大人しくしててくれ」

「え」


 こんな風に心が折れそうな時は、人肌と心臓の音が一番落ち着くらしい。少なくとも俺の知ってる2人はそうだった。それが当てはまるかは少し怪しいが、効いてくれると信じてる。


「落ち着け、音と体温だけ感じろ」

「え、え?」

「鼓動を聞け」

「あ」


 よし、震えが止まってきたな。これで持ち直してくれるといいんだが。


「良いか、お前ならできる。できるんだ、いいか、できるんだ」

「でき、る」

「ああ、できる」

「ボクは、できる」

「そうだ、お前はできる」

「ボクは!!」

「うおっ、びっくりした」


 いきなり大っきな声出すなよ……びっくりするだろ。


「できる!!」

「お、おう」


 あれー、なんか目がぐるぐるしてる。変なスイッチ入れちゃったかな……


「何がホワイトシールドだ!! ボクの色にしてやるよ!!」

「え? 自分の家全否定なの?」


 あ、でも盾に変化が。


「コレがボクの盾だ!!」

「絵の具を乗せる台みたいになったな」

「……ほう」


 え、でもあれ盾か? 1発で壊されそう。


「クリムゾン」


 赤色が正面に塗りたくられた、なんで空間をペンキみたいに塗れているんだ? そういう能力なのか。


「そんなものはまやかしよ、我が羽に貫かれるがよい」

「信じるぞ」

「大丈夫です、ボクのクリムゾンは負けません」


 羽が迫る、赤いペンキに突っ込み、そして。


「焼けた……」

「はい、ボクの盾はキャンバスです。色の意味をこの世界に定着させ護りとする。これがボクのホワイトシールドだったんです」

「そうか、強いな」

「シンさんのおかげです。ボクを、信じてくれたから」

「はは、照れくさい」

「さあ、落としましょう」


 さて、ラウンの盾は未知数だ。本当にあの鳥を落とせるかもしれない。まあ、盾で攻撃するのは間違ってるような気がしないでもないが。


「ははははは!! その程度で我を落とすと言うか!! 己の非力を呪うが良い!!」


 突っ込んできた! だが、これは好機かもしれない。打ち合わせなしの一発勝負になるが、うまくいけばこれで終わる。


「一発で決めろよ!!」

「シンさん……?」


 桜腕をめいっぱい伸ばして視界をふさぐ、そんで俺は軌道からずれる。


「小癪、だがただの時間稼ぎよ」

「分かってるよ、止まりゃしないってことは」

「……1人?」


 悉く桜腕を蹴散らされたが、俺の狙いには気づいていないようだ。


「さて、もう1人はどこに行ったかな」

「落ちたわけではない、ならばどこだ!! この空で自由に動けるはずもない!!」

「案外近くにいるかもしれないぜ」

「近く、まさか」


 そう、腕に紛れさせたラウンは既に護鳥の背にいる。


「護鳥様、これで終わりです。ブラック」

「馬鹿な!! 我が、地に落ちるわけが!!」


 黒く染まる羽、景色が歪むような妙な感覚、そして一気に自由を奪われる鳥。


「羽が、重い……!?」

「これではもう飛べませんね。お覚悟を」

「おのれ、おのれえええええええええええええええええええ!!!!」


 そうして、白き大翼は地に伏せた。俺たちの勝ちだ





【白盾・色板】

白い盾はボクのキャンバスだった、好きでもなかったこの名前、好きでもなかったこの盾、今は違う。どんな色でも塗ってやろう、極彩色の盾で護りたいものはもう見つけた。ボクの翼はもう見つけたんだ、ボクは飛べる、どこにだって。

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