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白盾の領主の子

「密猟者も引き渡したところで、さようならだな」


 これ以上、こいつと関わると多分面倒なことになるだろうし。俺の対人センサーが反応しているからな、こいつはヤベえ奴だって。何かに異常な執着を見せるやつは何処かしら破綻しているものだ、そういうやつに関わるとろくな事にならない。と、思ったけど姉さんとラァは例外か。


「ここで会ったのも何かの縁、ボクにもう少しだけお付き合いいただけませんか」

「嫌です」

「そこをなんとか!!」

「えー」

「もちろん報酬はお支払いします」

「いや、そう言う問題じゃない。少なくとも俺はお前が何者か分かるまではこれ以上の関わりを持たない。面倒毎に巻き込まれるのは御免だ」

「カァ!!」

「ほら、ヤタ・デシュもそう思ってるみたいだしな?」


 自分の立場を明かす事を嫌っているから、大した用でないならこれで言いよどんで終わりだ、ここで踏み込んでくるなら何か重大な要件だろう。


「……ボクの名前は、ラウン・ホワイトシールド。名前でお察しの通り、この街周辺の領主の子だよ」

「で、その領主の子が俺になんの用だ」

「ボクに護鳥様を貸して欲しい」

「理由は」

「護鳥様がいないと入れない場所があるんだ、そこに行かないとボクの望みが叶わない」

「それは、お前が次の領主になるために必要な事か」


 跡継ぎ争いに荷担するのは嫌だぞ、そういうのは身内だけでやってくれ。


「違う。これはボクがやりたくてやっているだけの事で家は関係ない」

「そうか、それでお前の望みっていうのはなんだ」

「卵が欲しいんだ。護鳥様の卵が」

「え? 卵泥棒?」

「なんでそうストレートに言うかなあ!!」

「だって、そうだろう」

「そうですけど!!」


 なんとなく魂胆が読めてきたな。


「つまりは、自分の護鳥が欲しいから卵の時から育ててしまおうってことだろう?」

「な、ボクの極秘計画をなんで!!」

「そりゃ分かるわ」

「それを知られたからには協力を得られずに返す訳にはいかなくなりました。護鳥の捕獲はあまり褒められた行為ではありませんから」


 ラウンが右手をさっと挙げると、周りに私兵のような感じの奴らが集まってきた。うーん、余計な事言ったな。これで私兵をなぎ倒したら多分お尋ね者だし、そうじゃなくても追われる身になるというわけか。協力以外の道がほぼ断たれたな。


「分かった分かった、手荒な真似はやめてくれ」

「そちらの護鳥様をこちらに」

「いや、俺がその場所に同行しよう。このヤタ・デシュは飛べなくてな。それに俺からあまり離れると死にかねない」

「……なるほど、護鳥様の命が脅かされるのは本意ではありません。貴方が同行することを許します」


 許します、か。生まれながらの支配層らしいところが表に出てきているな。こういうところも含めて名前を明かしたくなかったってことなのか。まあ、立場が分かってしまえばそれに相応しい振る舞いをする必要が出てくるのは理解する。


「で、今から行くのか。夜通しの依頼だったから疲れているんだが」

「分かりました。それでは明後日の出発とします」

「はいよ」

「では、ボクの持っている家に来て貰います。逃げられてはたまりませんから」

「ま、そうなるか」


 これで放免してくれるかもなー、なんて希望的観測をしていたけどダメだったか。逃げても追われるだろうから逃げる気はなかったけどな。


「着いてきてください」


 そうして連れてこられた場所はなかなか快適そうなアトリエだった。


「ここです、好きに使って貰って構いません。ですが、どこかに行く場合はボクに報告を」

「分かった、勝手にいなくなったりしないよ」

「お願いします。無理を言っているのは分かっていますから、不自由はさせません」

「そうしてくれると助かる。ふわぁ、とりあえず寝ても良いか?」

「どうぞ、中にベッドなどありますので」

「ああ、助かる」


 あ、一気に睡魔が来た。あれ、こんなの、前もあったような……


「馬鹿でしゅか!!」

「うおっ!? なんだお前か」


 目の前にいるやつの事を今まさに思い出した。


「あんな奴の言うことを聞いているのは百歩譲って良いとしても、どーして我の名前を間違えているんでしゅか!!」

「名前?」

「我の、名前は、ヤタでしゅ!!」

「だから、ヤタ・デシュだろ」

「ヤ、タ、でしゅ!!」

「だーかーらー」

「あー、もう話になんねえでしゅ。これもおいおいすり込んでいくとして、本気で卵を取りに行くのなら覚悟して欲しい事があるでしゅ」

「なんだよ、覚悟って」

「我はそうでもないかもしれないでしゅが、本気の同族はとんでもないでしゅ。卵を奪うなんていう蛮行を許されるとは思わないことでしゅね」

「俺、死ぬんじゃね?」

「精々頑張るでしゅ。でも、我を排斥した同族に痛い目を見せてやれるなら少しはスカッとするかもしれないでしゅ」

「排斥?」

「あー!! あー!! 何も言ってないでしゅ!! お目覚めでーしゅ!!」

「あ、お前!!?」


 目が覚める。


「……何か、警告されたような?」














【跡継ぎ】

ボクは、鳥を愛でていられればそれで良いんだ、それで、良いんだ。

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