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真夜中の密猟者

「ようやく解放されたか……」

「カァ……」


 ヤタ・デシュも疲れたようだ。ずっと見られ続けるっていうのはなかなかに疲れる。いや、中々どころじゃなく疲れる。


「いや、姉さんとラアには四六時中監視されてたようなもんだったけど。あれはこっそりやってたからそこまで疲れたりはしなかった、でもがっつり見られてるのはやっぱりな」

「カァ……」


 なんだよ、その異常者を見るような目は。俺だって今思えばなかなかの環境だったと思うけど。そのまっただ中にいる間はそれが普通だったんだからな。


「カァカァ」

「今度は同情の目か」


 羽でぽすぽすされた。ふわふわして気持ちいいじゃねえか。


「さて、この辺りが集合場所のはずだ」


 もう人が集まっている、雑談しているところを見るとその3人は知り合い同士かもしくはチームなのだろうな。……1人だけ別グループの奴が混じるパターンか。


「どうも、シンです。今日はよろしくお願いします」


 先制で挨拶をしてしまおう。変な空気になるよりは良いだろう。


「……っす」

「どーもー」

「はいよろしくー」


 男3人で、身体のサイズ的には大中小って感じか。ん? なんか小さい奴には少し違和感があるな、もしかして男装か? よく見れば身体の線は細いし、それに、見覚えがある。見覚えがあるっていうか一旦気づけばもう他の奴に見えない。なんせ半日以上拘束されたんだからな!!


「……何してんだ? お前絵描きだろ」

「なんの、こと、っすか」

「いや、バレてるから」

「ぼ、俺はお前なんて知らねっす」

「ははーん、そこまで言うなら俺にも考えがあるぞ」

「カ?」


 ヤタ・デシュを手に移して。


「食らえ!!」

「カァ!?」

「な!?」


 羽毛でふわりとビンタをしてやった。俺が知ってるあの絵描きならこんなことをされたら大変なことになるはずだ。


「あ、ああ、あふっ」


 はは、幸せそうな顔しやがって。これでもう言い逃れはしないだろ。


「……ずるいです、そんなファンサされたら耐えられません」

「お前が嘘吐くからだろう、後ろの2人は従者か?」

「……ボクの執事です」

「執事付きって……お前、貴族か」

「これ以上は止めておきましょう、ボク達が今のままの関係でいられるように」

「その言いようだとかなりの大物みたいだな」

「否定はしません」


 つまり、ここで良いところを見せると依頼料に加えて貴族のパイプまで手に入るかもしれないって事か。これは俄然やる気が出てきた、とは言えない事情がある。貴族には俺の家の顧客も相当数いるから、貴族の間で話題にでもなろうものなら1発でバレる。そして、鬼か悪魔かという形相をした2人が追ってくるだろう。それに追いつかれたらジ・エンドだ。死を偽装してまで手に入れた修行の旅路は手放したくはない。


「まあ、頑張って密猟者を捕まえようぜ」

「はい。地獄も生ぬるい責苦で生きている事を後悔させましょうね」

「……随分強火だな」

「ははは、当たり前じゃないですか。美しい動物たちを勝手に捕まえる人類なんて皆滅べば良い」


 真顔だー、これは本気で言っているやつだ。やっぱりこいつはあまり関わり合いになるべきではないな。この依頼のあとには会わないことにしよう。


「んじゃ、行こうか。灯りはつけるなよ」

「え、それじゃあ何も見えません」


 真夜中に行動する密猟者が相手だ、灯りを持っていたら逃げられてしまう。それでどうやって人間を探すのかって思うだろうが。


「ちょっとだけ、手管があるんだ」


 その正体は桜腕を拡散させて伸ばすだけ、見えなければ直接触って確かめれば良いんだ。相当気味の悪い感じになっているだろうが、見えなければ気味の悪さなど問題ではない。


「それはそれとして、密猟者ってのはどういう所にいるんだ」

「ああ、それなら風上です。匂いでバレるのを防ぎたいものですから」

「そうか、はぐれないように近くに居ろよ」


 風上のほうに向かって進んでいく、暗闇に静寂、密猟者なんてホントにいるのか疑わしくなってきたな。人の気配も後ろのやつら以外にはないし。


「……ん?」


 妙な気配がする、ような。だが前でも後ろでも。


「上か!!」


 桜腕を伸ばしたまま上に向ける、枝分かれした腕が一気に頭上の空間を叩く。


「ぬぁっ!?」

「ぐぉっ!?」


 2人か、早めに絡め取ってしまおう。


「待ちな、そこの妙なあんちゃん」

「……もう1人いたか」

「ああ、お前等を見ていたぞ。この女の首がぽとりと落ちるのと、あんちゃんが俺を倒すのはどちらが早いかな?」

「あー、そういう感じ」

「ああ、武器を捨てて伏せろ。そうすれば解放しようじゃねえか。こっちだって命あっての物種だ、危ねえ橋は極力渡りたくねえ」


 もしかしてこいつの固有能力は、隠れることがメインなのかもな。だから正面戦闘を避けているとみたが、どうかな。


「分かった、武器は捨てるよ」


 ごめんな、アルカ。少しの間だけ地面に置くぞ。


「そして終わりだ」

「あがっ!?」


 手を突いたらそこから桜腕を伸ばして真下からアゴを打ち抜いた。これで立ってくるならもう人間じゃない。


「ふぅ、密猟者なんてこんなもんだろうな」













【闇三羽】

俺たちゃ無敵の密猟屋♪ 闇に乗じて獲物捕る♪ 灯りもいらなきゃ元手もいらねえ♪ 夜中の狩りは実入りが良い♪ 誰にも邪魔をさせやしねえ♪ 邪魔する奴は肥料にでもなりな♪

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