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森のルールは森の生き物しか縛れない。

「つまりなんだ、樹人が神域の近くで生きることを許されるための約定が、今やただの縛りになってるって事で良いのか?」

「まあ、かなりかいつまんだ表現だがそれで良い」


 それぞれの長から話を聞いたのを纏めたら今の結論が出た、森の掟と呼ばれる存在は確かに高位の存在らしいが大昔の約束のせいで今の奴らが縛られるのはおかしいだろう。問題は、それを俺が解決する資格があるのか怪しいってところだな。


「俺が、例えば森の掟とやらを破壊したとして、それでお前等は良いのか?」

「……それは、分からない。掟無き森がどうなるのか見当もつかない」

「絶対にダメとは言わないんだな」

「そう言ったとしても、我の言葉は天使様を縛る効力を持たぬ」

「ああ、そういえばそんな設定だったな」

「お前をそう定義したことで、今のお前は森にあって掟に縛られぬ。一矢報いるとすれば、お前しかあるまいよ」

「俺が、正体不明の森の掟をどうにかできるのか」


 事ここに至って、逃げ出すような真似はしないけど。普通に返り討ちにあって森の養分になるのはあんまり嬉しくない結果だ。


「不明、不明ではあるのだが。まあ、なんとなく察している部分もあるのだ。皆あえて言わぬだけでな」

「お? 言って良いのか、じゃあオイラが言おうかな!! 森の掟ってのは、虫だ」

「また虫か!!」

「いやいや、虫は虫でも地下にいた奴らとは別なんだ。言わば益虫で、樹を守る虫なんだな。そもそも大樹には虫が2匹いた、食う虫と育てる虫だ。何時の日か、片方が地下に潜って根を食い荒らし、もう片方が樹を保護することにしたらしい」

「そのような話を聞いたことはありませんが」

「だって、言ってねえもん」

「く、またそのような!! 口伝は!! 正確にと!! 何度言ったか!!」

「まあまあ、それもあと少しで決着だ。地下の虫を潰したから、あとは掟を潰すだけだ。きっとやるさ、シンが」

「やっぱり俺か」

「仕方ねえだろ、オイラ達は掟に逆らえない。やるならシンしかいないんだよ、それもできるだけ早く頼む」

「なんでだ?」

 

 地下にいたのと同規模の敵なら俺には無理なんだけどな。


「時間がない。今日はシンとバンで無理矢理閉廷させたが次はこうはいかない。オイラが死罪になる」

「それは今日みたいに口先でどうにかならないのか」

「ならないな。もうあんな飛び道具は通用しない」

「……次の裁判はいつになる」

「ま、長くて3日。早くて明日だ」

「時間が本当にないな!!」

「だから言ったろ、できるだけ早く頼むって」

「クソ!! やってやるよ!! アルカをみすみす死なせてたまるか」

「……くひっ」

「アルカ様?」

「なんだ?」

「今おかしな笑いかたをしていたような」

「ははは、おかしな奴だなあ。オイラがおかしな笑い方なんてするか」

「はぁそうですか」


 今のは中々昏い笑いだったな、嫌な感じはしないから大丈夫だろうけど。


「おい、これ持ってけ」

「こちらも」

「これは、楓の一枝と竹の一節か」


 まあ、樹人の長が渡してくるものだ。おそらく何かしらの効果があるものだろう。


「……これ、爆弾じゃん」


 【熟練工】が言う、これは簡単に使える武器だ。楓のほうは爆炎を吐き出すもので、竹のほうは瀑布のごとき水を吐き出すものだ。


「これ投げたら森がヤバいんじゃないのか」

「何言ってんだ、楓の焔が木を焼くわけないだろ」

「同じく、竹の清流は木を折らない」

「あら便利、一家に1本欲しいな」


 軽口を叩くくらいの余裕が出てきた。強い武器は自信を与えてくれるものだな。それが虚ろな自信だとしても、あるにこした事はない。


「一応聞くんだが、森の掟の巣とかってあるのか」

「そんなの知るか」

「ええ、知らない」

「そっか……森を走り回るのは非効率なんだけどな」

「あーそういや、なんか知らねえけどあそこの1番高い木から妙な気配がすんな」

「奇遇、あそこの一番上から嫌な感じがすると思っていた」

「……なるほど、ありがとう」

「なんのことか分かんねえな」

「礼を言われるようなことなんて1つもない」


 うーん、あそこまで言っておいてしらばっくれるのは中々図太い連中だ。正直に話す事ができないような制約でもかかってんだろうな。


「いや、思ったより高いなあの木」


 割と離れてたからそんなにでもないように見えてたが、あれ上るのしんどいぞ。


「え? 嘘? そんな風にできる? え? マジで? できるの? え? やっていいの? え? 本当に?」


 【熟練工】が言う、剣を持って腕を縦に振れと。それで全てに片が付くと。信じらんねえ、でも【熟練工】は俺に嘘を吐かない。


「……やってみっか」


 勢いよく桜の腕を上にあげる、それに合わせて腕が伸びていく。それ以上に剣のアルカもジャカジャカと音を立てて伸びていく。


「いやこれ、どこまで伸びて」


 ある瞬間が訪れた、伸びる勢いと落ちる力が釣り合う一瞬。まあ、俺がそこに合わせてなにか超絶技巧を披露することなどできないので重力に任せて落とすだけだが。


「いけぇえええええええええええええええええええええええええええええええええ!!! これが高さと長さと硬さの力だぁああああああああああああああああ!!!!!」


 俺の力と言えないのは悲しいが剣のアルカは直線上の全てを削り取り、そして正面の先にある途轍もなく高い木を縦に割った。


「なにしてんだてめえ!! 森を破壊すんじゃねえ!!」

「あいたっ!?」


 え、たぶん虫倒したのに殴られたんだけど!?




超長結ちょうちょむすび

長く、硬いものが超々高度からしなりを加えて落下する。これは剣術ではない、ただ支えていたものを倒すだけのこと。それだけのことで、起承転を消し飛ばす。

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