森の裁判
「あの、これはどういう?」
「オイラにも分からん」
なんとかダンジョンから戻ったと思ったら速攻でアルカが拘束された。ヨシノも何も言わねえからマジで事態の把握ができない。
「説明、をしてはくれないよな」
「……」
あー、これ怒ってるわー。確かに動くなって言われてたしなー。
「んで、ここは法廷と」
見たところ竹の奴が裁判長で、ヨシノと楓の奴がそれぞれ証言をする役割か。
「判決、死刑」
「異議なし」
「異議なし」
「ちょぉおおおおっと、待ってもらって良いか!?」
おかしいおかしい、どう考えてもおかしい!! 始まって速攻で死刑を言うのもアレだが、異議なしで即決されるのもおかしい!!
「いくらなんでも!! これは!!」
「いや、良いんだ。オイラは森の法で裁かれる。それだけだ」
「ええ……どうなってんだ……」
待って、ドッキリか何かを疑うほどにあっさり過ぎる。
「ん?」
なんか、手のひらに根が。文字を書いている? つっても俺は樹人の文字を知らない、何を求められているんだ。いや、これは、俺の知ってる文字だ。
「お、ま、え、の、や、く、わ、り、こ、れ、は、み、ら、れ、て、い、る。お前の役割、これは見られている……?」
あー、なんとなく理解した。ここではこいつらは自分の役割どおりの振る舞いを強要されるのか。立場っていうのは面倒だな。
「んんっ!! 天使の視座から意見を言っても良いか」
「承る。天使の視点からの意見を」
「俺は見た。この村を脅かす虫の親玉を殺す瞬間を、本日をもって囓る者の被害はなくなる。その功労者を死刑にするというのは些か不当ではないか」
「っ!? 天使の言に疑いを持つべきではないが、これは緊急許されよ。その言の根拠は」
「これだ。囓る者の王の亡骸よりダマスカスを手に入れた。それをもとに作りあげた剣だ」
これが証拠になるかは分からんが、とりあえず証拠になると思って掲げてみた。これでダメだったらまた何か考えなきゃな。
「ダマスカス、確かに。純度はいくらか落ちているが」
「虫の王、本当に存在するのかは分からないが。ダマスカスを手に入れるほどの何かをした証拠にはなる」
「一定の減免をするのも止むなしか」
あー、なんとなくいけそうな空気になってきた。
「では、その剣をこちらに納めてもらおう。それで本日は閉廷とする」
「あ゛? シン以外が触れるなよ。それはオイラとシンの絆だぞ」
まずい、アルカがキレかけてる。しかも、この感じはマジギレの奴。
「済まないが、これは渡せない。他の者が触れると剣が暴走して一帯が吹き飛ぶ」
「……なるほど。天使にしか持てぬ神器というわけか、それならばこの要求は取り消そう」
ふー、なんとか阻止したか。ここまできて全部ぶち壊しになるのは御免だ。
「一度閉廷を宣言した以上は剣の押収が為されずとも閉廷は変わらぬ。解散」
ざわざわと周囲の木々がざわめき、何かが離れていく感覚があった。
「ふぅ……なんとか凌いだな」
「桜の長、今度こそ説明をしてもらえるんだろうな?」
「ああ、今回はお前の手柄だ。我らはあれには逆らえぬ、約定のせいでな」
「あれってのは、さっきざわざわしてた奴か」
「ああ。あれは森の掟と呼ばれている、樹人は掟に逆らえぬ」
「いったいなんなんだそいつは」
「分からぬ、姿は見えぬが気配はあり、そしてすべきことを強制させる。そういうものだ、とても承服しかねる裁判をさせられるようにな」
これは、あのデカブツ倒したからってここの問題が解決したってわけじゃないみたいだな。
「おー、やっぱりお前がヨシノになったんだな。悪かったないきなりいなくなって」
「よ、しの様。よくぞご無事で……!!」
「ははは、今はお前がヨシノだ。オイラの名前はアルカって事になったからそっちで呼んでくれ」
「アルカ様……」
よたよたとヨシノが近づいていく、感動の再会か。良いな、俺がやるときはたぶんとんでもないことになるだろうから羨ましい。
「こ、の、うつけ者がぁあああああああああああああああああああ!!!!」
「へぶぅ!?」
「あなたが!! 全部ほったらかして!! いなくなったから!! 内紛状態にまでなったんですよ!! どうしてくれるんですか!!」
ら、ラリアット、からのジャーマンスープレックスだ。初めて見た……完璧に決まってる。ゴングの鳴る音が聞こえてくるようだ。
「あっちゃあ、その言い方だとエデの奴は伝言をしくじったな」
「先代の楓の長は!! 今も眠り続けています!! その身体に残った傷があなたの攻撃によるものだと思われて!! 戦争が始まったんです!! 早く誤解を解いてください!!」
「うーん。それ合ってるから誤解じゃないぞ。オイラは確かにエデの身体を抉った」
「は?」
「それじゃあ、戦争が終わらないですよ!! 嘘でも良いですからやってないって言ってください!!」
「おいおい、ここには今のエデもいるだろう」
「うるさい!! いい加減疲れたんですよ!! なんで唯一まともに話せるお友達と敵対しなくちゃいけないんですか!!」
「事情があったんだよ、神域に向かうにはそうしなきゃならなかったんだ」
「だからって!!」
これ終わんないな、ちょっと介入しよう。まあ、なんとなく事情は分かったけど。
「あー、ちょっと良いか?」
「なんだ!!」
「俺が話を纏めた方が私怨が入らなくて良いと思うんだが」
「……業腹だが、一理、ある」
はー、まあ話を聞こうじゃないか。
【森の掟】
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