風の一翼 ラファエル・ピース③
「無制限供給開始」
完成したフリズは簡単に言えば槍を撃ち出すバリスタだ。撃ち出す槍というのは言うまでもなくグングニール。
溜めなし、連写可能、加えて弾切れなしのグングニールというのが主な能力。それに耐えうる機体を作るには俺の仲間を全部つぎ込む必要があった。
『愚か者め、どれだけ力を込めようと、どれだけ策を弄そうと、我に傷をつけることはできない』
「おいおいまだ気づかないのかよ、お仲間の匂いはしないのか?」
『わけのわからない事を、貴様の前の盾もじきに崩れる。まずは四肢をもぎ、そして少しずつ刻んでやろう』
「怖いこと言うな、思わず撃っちゃうだろ。フリズ起動」
白銀のバリスタであるフリズに緑の光が灯る。照準は賢者の石を使ってつけてある。
あとは俺の合図一つだ。
『さあ、無様に泣き喚いて命乞いをするがいい』
「発射」
甲高い音と破裂音、そして周囲を薙ぎ倒す衝撃が発生した。一瞬だけ目に見えたのは黄金の一閃。
正面に迫っていた嵐はど真ん中に穴が開いて消し飛んだ。その延長線上に居た嵐の巨人は。
『が、ふぁ……!?』
「一撃では消し去れないか。流石に丈夫だな」
『馬鹿な、馬鹿なばかなばかなぁああああああ!!!! そんなはずがない、あり得ない、この世界の存在が我に傷をつけるなど!!』
「不思議だよなあ、お前はお前の世界のものでしか傷つかないはずなのに」
『そうだ!! 我は貴様らの攻撃など……!!」
「あーあ、自分で言っちゃったか。推測が当たってて良かったよ。じゃあ次」
まあ、母さんの攻撃を喰らった時は我らの世界で造られた武器ならなんとかかんとか言ってたし。姉さんの時もこちら側ならとか言ってたからな。
幸い俺の攻撃は賢者の石製品で行うもの、つまり奴の世界の存在による攻撃になる。
これで通じなかったら困ったが、まともに入ったようで良かった良かった。
「10連でいってみようか」
照準は依然として嵐の巨人を捉えている。全身を貫けば消えるのか、核的なものがあるのか。どっちにしろ畳み掛けるのが良いだろう。
『まだだ……まだ復讐は為らぬ。消えるわけには……!!』
いや10発食らって死なないのは固すぎるだろう。このフリズから出てるのほぼ100%出力グングニールだぞ?
まだ何か種があるってわけだ。
「このまま100発でも1000発でも撃ち込んでやることができるが、どうする?」
『降伏勧告など意味はない。殺せ』
「そう言うな、俺もちょっとお前に聞きたいことが出てきたんだ」
『話すことなどない』
その種を聞き出すか。もしくは何か内部情報を喋ってもらった方が次があった時の対策が立てられる。
幸い今は動く力もないようだ。尋問するなら今だな。
「そう言うな、俺だっていきなりお前に襲われて戸惑っているんだ。俺が賢者の石の末裔であることはそうだが、そんなに恨まれるような事を賢者の石はしたっていうのか?」
うんまあしてるだろうな。そこは察しているが、あえてこう言えば釣れるか?おおよそ、ゲリラ的に攻め込んではその世界の存在を拉致るか肉体の一部を持って帰ってきてたとかだろうが。
だが、これは推測であって当事者の証言は得られるならその方が信憑性がある。
俺は賢者の石について知らなすぎるからな。
『知らぬだと!? あのような非道を賢者の石は葬り去ったというのか!!』
「そうだ。俺は賢者の石を受け継いではいるが、賢者の石が何を成していたのかはまるで知らない」
さあて、どんな話が出てくるか。
『ふ、それがなんだ。貴様が知らぬともその身は罪で穢れている。それだけだ。貴様が私から何を聞き出したいかは分からんが、そう易々と話すと思うか』
「そうか、なら消えてもらおう」
『そうするがいい。だが、我に時間を与えた事を後悔することになるがな』
「あー、自爆とかする感じ?」
『もう遅いぞ止まらぬ。貴様を道連れに我は散る』
「逆に聞くけど、自爆を想定していないと思うのか? 俺は賢者の石で常に周囲の情報を把握しているのに?」
最終手段って言ったらまあ自爆だしな。
中心部に熱が集まっているのは見てたし。
『何をすると言うのだ!! お前の武器で我を撃ったところで止まらぬ』
「止めない。言ったろうが、消えてもらうって」
熱の集まる場所が核だろう。まあ、それが分からなくても良かったけど。
一つだけの機能しか要らないなら、俺の仲間を全部使って組み上げる必要なんてなかった。不慮の事態が起こってもなんとかできる圧倒的な力を用意したかったんだ。
「勅令」
動きは止めた。もう避けられない。
「フリズを第二形態へ移行」
バリスタの形が変わっていく。玉座と一本の剣。それがフリズの真の姿。
剣を手に玉座に座る。
引き金は剣、これを落とせば良い。
「ラグナロク」
剣は地面に吸い込まれ、そして。
『な……あ……!?』
「上を見ろよ、あれがお前の死だ」
天から降るは赤熱する物体、それが数百だ。隕石とは似て非なる破壊の権化。
質量投下型衛星起動狙撃兵器ラグナロク、今の俺が使える権限で最強の攻撃だ。
『……貴様に呪いあれ』
「静かな断末魔だな、覚えておく」
数秒後、嵐の巨人は跡形もなく消え去った。溜め込んだ熱量すらも上からの暴力に押し潰されて。




