巨木の村7
突然現れた男たちに捕まって、運ばれている。男たちは私を商品だと言った。強い力で拘束されているわけではなかったが、力の弱い私は抜け出すことが出来ず、悔しさで涙が滲んだ。
馬車の荷台の上に転がされて、上から布が掛けられる。
このまま何処かに連れて行かれてしまうのかしら。おばばとシルクの顔が浮かんだ。おばばには本当に良くしてもらった。村に現れた私を匿ってくれたのだから。閉鎖的な村では批判されることもあっただろう。それでも私を家においてくれた。
シルクにも、ちゃんと仲良くなりたいと伝えれば良かったと悔いが残る。そういえばシクルは湖には来るなと言っていたわ。シルクにはこの事がわかっていたのかしら。
・・・!
シルクの声が聞こえた気がすると、男たちが騒ぎ始めた。
強い力で体が持ち上がる。
「あわわわわ・・ 」
拘束が解かれたので見ると、白い髪をなびかせた後ろ姿があった。
「シルク・・・?」
いつもとはシルクの格好が違うようだ。こちらを振り返ったシルクは、黒光りする軽装の鎧を身につけ、鎧の裾から白いフリルがのぞいていた。背中には角度によって虹色に光るマントをたなびかせている。
男たちはシルクに逆上している。
シルクが牙のある男に向かって走り出した。男はサーベルを構える。
えっ!!
「シルク!!!」
サーベルが振り下ろされる。危ない!!
シルクは素早い動きで、サーベルを小手を使って弾き飛ばした。そのまま男に体当たりを食らわす。
大柄の男は、シルクに弾き飛ばされて、背中から太い木に激突し、そのまま動かなくなった。
残された男たちは、必死で起こそうとしていたが、シルクが一歩踏み出すと、
「ひー!!化け物!!」
慌てて、のびている男を荷台にのせると、馬車を走らせて逃げていった。
馬車の音が聞こえなくなると、
「シルク~」
腰が抜けて動けなくなる私にシルクが近寄ってくる。パタパタと埃を払うようにして、少しずつ元の服装に戻っていった。
「ちゃんと、怪しいやつらがいるから村から出るなと言えば良かった。悪かった。」
「シルク!ありがとう!もう二度と会えないと思った~。」
泣き出した私の頭をゆっくり撫でて、優しく立ち上がらせる。
「村に帰った方がいい。おばばが心配してる。」
「なんで?わかるの?」
小さな羽音が聞こえた。
シルクが指を差し出すとそこに小さな蜜蜂が止まった。
「村に残しておいたこの子が、教えてくれたよ。おばばが駆けつけようとして、村人に無理やり止められたらしい。」
鬱蒼と繁る樹木を見上げて、
「おばばからはここは見にくいだろう。まだ助かったことを知らずに心配してるはずだ。」
シルクはなぜ色々なことを知っているのか、不思議ね。すべて、あの蜜蜂が教えてくれたのかしら?
「そうね。」