グランデールの街7
「ねぇ、シルク。雑草って言われている草花も気になるのよ。でもやっぱり食べられるものを優先するべきよねー。」
「フローラが気になるのなら何でも観察してみたらいいと思うぞ。」
「シルクは優しいから、そういうけれども私たちには50日しか無いのよー。少しも時間を無駄にできないじゃない。」
うーん。と悩んでいる。
「住む場所が変わっても、学ぶことは出来るよ。」
「そう言っても、お金を稼ぐために時間は限られてしまうわよね。」
はぁー。と大きなため息をついている。
「私も自立しないとって思い始めたのよ。まだどう自立するのかもわからないけれど。」
「シルク~。笑わないで~。」
「フローラは、いつまでも甘えていていいんだよ。」
「うわー、シルク!!甘やかさないで~。」
私たちの中身の成長は、早いのだ。恋だの愛だのと言い出すのもそう遠くないのかもしれないな。フローラは私が言うのもなんだか、黙っていれば儚げで、話し始めたら太陽のように輝く笑顔が印象的だから引く手あまただろうな。
寮のなかをグルグルと歩き回って、ちょうどいい場所を探している。花壇にいるフローラからあまり離れすぎず、仕事が出来る場所を。仕事と言っても絹を作り出すだけなのだか、あまり大っぴらにしたくはない。ライには絹を売っているところを見られてしまっているから、私が蚕の精霊だと感づかれているだろうが他の人にまで知らせる必要はないだろう。
見られたくないなら部屋のなかでやればいいのだが、それだとフローラの様子がわからない。自警団本部の目の前だから犯罪に巻き込まれることはないだろうが、警戒しておくに越したことはない。
寮を案内してくれた女性が言っていたな。女性は比較的早く出ていくと。女性寮は住んでいる人数が少ないようだ。今も2~3人フラフラしているだけだ。それに比べると朝、男性寮から出てきた人数にぎょっとしてしまった。
ロビーの隅で、壁に向かうように座り絹の糸を紡ぎだした。
フローラがたまに駆け寄ってきて、出来たことの報告をする。
「シルクー。後で砂糖を買いにいきましょー。」
「砂糖か。」
「イチゴがたくさんとれたの。ジャムってやつを作ってみたいのよ。」
「じゃあ、パンも必要だな。」
「そうねー。たくさんできたら皆にお裾分けしないと。」
フローラがキッチンでジャムを煮ている。
「すごくいい匂いね~。」
匂いに釣られて住人がきたようだ。
「できたら試食してくださいな。売れるくらい美味しいといいんだけれど。」
「あら、朝市で売るの?あなた美少女だから、てっきり玉の輿狙いなのかと思ったわ。」
「玉の輿?」
「そうよ。私も玉の輿までいかなくても、稼いでくれるパートナーを見つけたくてここにいるのよ。パートナーが見つかると皆出ていくわー。」
「パートナー?」
「生涯の伴侶のことよ。私の生まれ育ったところは人が少なかったから、パートナー探しをするには街に出てくるしか無かったのよ。でも田舎の村より色々なものがあって楽しいわ~。もう村には帰る気なんてないんだけれどね~。」
そうなのか。などと言っているうちにジャムが煮詰まってきてしまった。