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グランデールの街6

「あそこに見えるのが寮です。右の棟が男性寮で、左の棟が女性寮です。花壇は使っていないところでしたら好きに使ってください。引っ越すときに綺麗にしてくだされば問題ありません。」

 近づくにつれ、色々なものが見えてくる。花壇もいくつもあり、外にベンチも置いてあった。

 小さい窓が、等間隔でならんでいる。中に入るとロビーは広かった。

「ライ、私たちが案内できるのは共用部分までだから、女性団員を呼んできてください。」

「あぁ、わかった。」

 ライがスタスタと歩いていく後ろ姿を見送ると、ジルはキッチンとトイレ、シャワーなどの共用部分を簡単に説明してくれた。

「ジル、入居希望者ですわね。私がご案内いたしますわ。」

 栗色の髪をひとつにまとめたアーモンド型の瞳が印象的な女性が近づいてきた。二人に似た服を着ているが、かなり露出が多いようだ。

「あぁ、まずは見せて欲しいとのことだ。」

「では、空いている部屋へご案内しますわぁ。こちらへどうぞぉ。」

 扉がたくさんある廊下を進み、二部屋連続で空いているところを教えてもらった。部屋の中にはベッドしかなく、余計なスペースもない、本当に狭い部屋だった。

「ここは、寝るためだけですわね。普段は共用部分を使ってくださいねぇ。」

 彼女は、身をくねらせて話す。

「女性の場合は、早めに住むところを見つける方が多いですわよ。生涯の伴侶を見つけて出ていくのですわぁ。」

 妖艶な笑みでこちらを振り返る。

「生涯の伴侶?それって…。そうゆうものなのかしら。」

 少し難しそうな顔をしながら、やはり実感はないようだ。フローラにはまだだろうなと微笑ましく思う。

 ロビーに戻るとライとジルが待っていた。

「あら、ライ様のお手を煩わせることでは、ありませんでしたのに。こちらは、私に任せてゆっくりしていてくださいまし。あなたのお部屋まで報告にあがりましたのに。」

 身をくねらせて、猫なで声でライにすり寄る。

 ライが渋い顔でにらみ、ジルが大きなため息をついたので、小さく舌を出しこちらに軽く頭を下げた。

「それでは、失礼いたしますわぁ。何かございましたらお声掛けくださいねぇ。」

 腰をくねらせて歩いていってしまった。

「はぁ…。」

 ジルが笑顔を取り繕って、

「住むところが決まるまでの間だけでも無料で泊まれますし、いかがでしょうか。」

「至れり尽くせりで、ありがたいくらいです。よろしくお願いします。」

「やったー。泊まるところがあってよかったわー。」

「お手伝いできることもあるかと思います。何か問題が起こりましたら、隣の自警団本部に。」

 ジルが頭を下げると、まだ立ち去る気のないライを引っ張って連れていった。


 荷物を部屋に押し込むと、フローラが大事そうに抱えていた野菜の苗を植えた。フローラが力を注ぐと真っ赤なトマトと鈴なりの枝豆ができた。もうひとつはフローラが引っこ抜くとジャガイモがごろごろついていた。そのあとイチゴを作り出したりしばらく花壇から離れなかったので、シルクは蜜蜂を解放して、絹の糸を作り始めた。


 フローラは少しずつ着実に知識を増やしている。彼女が自分の身を守れるようになるまであとどれくらいだろうか。勉強熱心な彼女だから、そう遠くないうちに様々なことが、できるようになるだろう。

 ホント、何にでも前向きな彼女の性格に感謝だな。

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