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花咲く街道2

村を出てからかなりの日数がたったが、気にしてはいなかった。

「フローラ、そろそろ街道にでるはずだぞ。」

 昨日蜜を集めに行っていた蜜蜂からの報告だ。

「本当に?今日は一日進みましょ。街道が見たいわ。」

 テンションが上がったようだ。寝るときに下に引いていた大判の布を率先して片付け始めた。

「シルク、早く~。」

 シルクも急いで荷物を詰め背負うと蜜蜂の入った箱を抱えてフローラを追う。

 進むことに集中しているフローラは、思ったより早く、昼頃には急に広い道が現れた。街道とはいっても森の中を通る道は見通しが悪く、人は見当たらなかった。森を抜けるまでは今までとあまり変わらない道のりになりそうだ。


 たまに馬車とすれ違ったり、抜かされたりした。

「街まで行くなら、乗ってくか?」

なんて声を掛けてもらうこともあった。

「街に知り合いがいないなら、初めは宿に泊まるしかないなぁ~。お金がないと厳しいぞ。」

 親切そうな商人は、心配そうにしていた。

「大きな街だ。何でもよければ仕事も見つかると思うがなー。それか、なにか売れるものでもあれば。ただ、売ろうとしても慣れるまでは買い叩かれるぞ。」

 相変わらず心配そうだが、長い時間留まっているわけにはいかないのだろう。

「気をつけろよ。」

 馬を走らせて、見えなくなっていった。

「色々教えてくれて、ありがと~。」

 フローラが手を振っている。

 確かに昔の貨幣だけでは不安があった。今のお金を手にいれて、貨幣の価値を知る必要がある。


 木の生える間隔が空いてきて、道の先に野原が広がっているのが見えてきた。すれ違う人も少しずつ増えてきた。ついに森を抜けると、街道を行き交う人達が見えてきた。


 明日には街に入れそうなところまで来て、異変が起きた。寝て起きても全然体力が回復しないのだ。エネルギーが足りないような。

 「シルク~。今日はここで一日ダラダラしましょー。長旅の疲れがでたのよ。」

 フローラも動きたくないようだ。

「そうだな。もうかなり移動しているからな。少しゆっくりしよう。」

 一日中、日光を浴び、そよ風に吹かれて過ごした。

 次の日、少しだけ動けそうだったのだが、完全に回復したわけではない。

「シルク~。私、本当に疲れてしまったみたい。もう一日ゆっくりしましょ。」

「おかしいなぁー。二人とも同じ症状で、回復しないなんて。」

 不思議に思いながらも、道から少し外れた野原でゴロゴロしていると、日光が気持ち良かった。

 また次の日、謎の症状で二人とも旅を続ける気になれないが、行くところもないので戻るわけにもいかない。

「シルクー。何かがおかしいと思うの。」

「今まで旅をしてきても、ゆっくり進んできたから、体調を悪くしたことなど無かったはず。」

「困ったわねー。」

 今日もここでダラダラと過ごして終わっていくのかと思い始めた頃、

「あれ?お嬢ちゃん達、まだこんなところにいたのか。」

 だいぶ前に親切にしてくれた商人だった。

「原因はわからないけど、体調がすぐれなくて、もう二日もここにいるのよ。病気じゃないと思うんだけれど。」

「あぁ、お嬢ちゃん達は、食事の習慣がないのか。自然豊かなところから来たんだな。」

「食事?」

「あぁ、街にも自然エネルギーはあるのだが、精霊の数が多すぎて足りていないんだ。足りない分は、食事をすることで補わないと動けなくなっちまうんだ。」

 ごそごそと荷物を探ってパンを差し出してくる。

「タダでやるわけにはいかないが、安くしとくよ。」

「私たち昔のお金しか持ってないんです。これで買えますか?」

 コインを取り出すと、

「ホントに昔のコインだなぁー。まぁ、何かの縁だ。それでいいよ。」

 持っていたお金で二人分のパンを譲ってもらった。

「ありがとうございます。あの、売れるものは持っているのですが、どこで売ったらいいのでしょうか?」

「ここなら、街に向かう商人に声をかけてみるんだな。街の中で売るなら朝市で売るか、商店に売り込むか。」

「街に向かう商人?」

「あぁ、街に着けば仕入れたものを売りやすいだろ。街から出ていく商人よりは街に戻る商人の方が断然買ってくれる確率は高いぞ。まぁ、ものによるがな、色んなやつに声をかければ買ってくれるやつもいるだろう。」

 お礼を言って見送ると、二人でパンを食べた。少しだけ蜂蜜を塗ったパンは本当に美味しかった。

「パンってこんなに美味しいのね。シルクの作る蜂蜜はもちろん美味しいのだけれど。パンは初めて食べたわ~。」

 食事が終わって少し休んでいると、ビックリするほど体調が回復してきた。

 

 街に急ぐ商人が増え始めた頃、一人の商人に話しかけた。

「すみません。巣蜜があるんですが、これ、いくらで買ってくれますか?」

「巣蜜とは、珍しいなー。」

 箱に入った巣蜜を見せると、商人の顔色が変わる。

「りっぱだなぁー。1万ルビーでどうだ?」

 安くつけられたのか、普通なのかわからない。

「1万ルビーかぁー。」

 悩んだふりをしていると、次の商人が近づいてきたので、フローラが話しかける。

「巣蜜を買って欲しいんです。是非見ていってくださいな。」

 きれいな金髪にフードをかぶって伏し目がちにお願いする姿は多くの商人の興味を引いたようだ。

「いくらで買ってもらえますか?」

「1万5千ルビーでどうだ?」

「おらは、2万出すぞ。」

 少しずつ値段が上がっていって、3万ルビーで買ってもらった。

 シルクが値段の交渉をしている間に、フローラは古いかごと鍋を見つけて、昔のお金で譲ってもらっていた。


「お金も手に入ったし、良かったわねー。」

「明日はついに街に入れそうだな。」

「そうね。それにしても、時間がすごいかかったわねー。」

 笑いながら来た道を振り返ると、通った場所一面に花が咲いていた。

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