Trick at time (時の悪戯)
4気筒のエンジンは、静かに鼓動をあげていた。
ワイパーは、フロントの雨を削っていた。
ウインドーワイパーをかければ、60kw/Hならはじくのだけれども。どうもワックスとの相性が悪いらしく、油膜がはって雨のよるは見ずらかった。
ANF(米軍放送)から、スローバラードがかかっていた。
ボディアースが効いていないのか、FMの入りは悪く、NHKの夜遅い時間は、たいていクラッシクが多く、レコードからのダビングもめんどくさかったので、ANFに合わせていた。
時々、軽快な曲や、英語の放送枷あって、なんとなくカッコよかった。
夜の国道は、車も少なく、特に気ぜわしくシフトチェンジかる必要はなかった。
「あんた、入りたいの」
とさっき乗せたばかりの、女が窓の外を見ながらいった。
確かに、両サイドは、けばけばしい看板がある。
「いや、そんな気はないよ」
と秋生はいった。
息苦しい気がして、少し窓をあけた。
「煙草吸ってもいい」
と秋生は、となり女に尋ねた。
「どうぞ」
と女は答えた。
秋生は、ラッキーに火を付けた。
「私も吸っていい」
と女がいった。
「これ、結構きついよ」
「ケント吸っているから大丈夫」
といったので、煙草を渡した。
ジッポのライターを渡した。
アッシュトレイのがイルミで照らされていた。
ラジオから、ニューヨーク・シティ・セレナーデが流れていた。
女が、不意にささやくように歌いだした。
秋生は、のびやかな歌声と、正確な発音に驚いた。
この曲は知っていたが、曲がきれいだとしか認識していなかった。ましてや、歌う奴なんて知らなかった。
「歌うまいね」
と秋生は、女にいった。
車内のイルミでは、表情までは分からなったが、しぐさから照れているように見えた。
「あのさ、この歌ってどんな意味なの」
秋生はなんとなく興味が湧いて聞いてみた。
秋生自身、特に洋楽に興味があるわけではなく、メロディーラインだけで聞いているようなもんだつった。
「ただの、ラブソングの、"The best that you can do.The best that you can do is fall in love " 恋に落ちるしかないんだという意味だよ。」
女は言った。
秋生は、曲のサビが、"The best that you can do.The best that you can do is fall in love "だ分かった。 ベストを尽くせ、恋に落ちるのをとか意味が少しわかった。
でも、後ですべての歌詞の意味を理解したときに、"Trick at time (時の悪戯)"と思い知った。
車は、早岐瀬戸を過ぎて、35号入った。
「島瀬でよかったよな」
と秋生は、女に尋ねた。
「うん」
と女はいった。
そもそも、こんな状況になったのは、女から声をかけられたからだ。
"佐世保までのせてくれない"
という言葉に、秋生は特に考えるでもなく帰り道だしいう単純な考えで乗せてしまっていた。
下心がないといえば、聞こえはいいが、要するに経験が無いだけだ。
日宇の峠を超えてから、佐世保駅まではすぐだ。
程なく、島瀬公園前に着いた。
サイドブレーキを引いて、車を止めた。
「ごめんね、ありがとう 助かったわ。」
といって、ドアノブにてを懸けた。
「あのさ、俺は、秋生っていうだ。川端 秋生」
と秋生は、女むかっていった。
女は少し驚いた顔で、
「私は、真理愛、西 真理愛よ」
といって、ドアを開けた。
外灯に照らされた、浅黒い肌に大きな瞳が照らされた。
"Once in your life you will find her 一生に一度だけ出会うでしょう
Someone that turns your heart around 心を乱されるような人に"