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Renion Bridge (再会橋、再び出会う場所)  作者: 池端 竜之介
3/24

At night of a drizzle.(霧雨)

 煙草が切れた。

外は、雨が霧雨のように降っている。

台風の後、急に残暑が収まって夜になると結構冷えてきて、朝方は半袖では寒いくらいだ。

アパートから、煙草の自販機までは結構ある。

エルジンのクロノは、夜の10時半を指している。

秋生は、パーカーに袖を通すと、車のキイを掴んで財布をポケットにねじ込んで、アパートの外に出た。

ほんとは、オイルの温度が上がるまで暖気するのだが、近場だしエンジンをまわすこともないので

サイドブレーキを解除して、ブレーキを踏んで、エンジンをかけた。

一発始動、会社のバンのようにチョークを引かなくてもいいのは楽だ。

夜中なので、吹かさずに静かに車をだした。

エアコンの摘みを、回してフロントの曇りを消した。

自動販売機まで、前で車を止めて、ラッキーストライクを買った。

秋生はふと、このままドライブしたいなと思った。

明日は、月曜日だか今日は昼まで寝ていて、眠くはない。

シガーライターを押し込んて、ポンと戻ってきたところで、煙草に火を付けて一口吸った後に、ギアを入れて、国道に出た。

さすがに、混んではいなかった。

そのまま、道なりに車を走らせた。

ガソリンのケージは、満タンよりひとメモリ減っていた。

燃費は、無茶乗りしなければ、9kmくらいだ。

65リットルのタンクは、満タンでほ8千円くらい入るで結構痛かったが、2400回転から聞き始めるターボーが、3000を超えるとドッカンターボーになるという快感がたまらなかった。

6気筒でないため、GTの冠はないけれども、2,000CC未満なので税金も安かった。

ソアラの2.8リッターを買ったやつは、5月の税金時期は真っ青になっていた。

日宇のバイパスを超えて、早岐方面に走らせ時にふと、西海方面の標識が目に入った。

本来なら、夕方の西海方面はサンセットロードとして有名なのだが、夜は夜で別の意味で有名だ。

道行く横には、たくさんのネオンで、佐世保方面や長崎方面から車が流れる。

残念ながら、車命の秋生はまだ経験がない。

それどころ、工業高校での秋生は彼女がいた経験もない。

もちろん、童貞である。

職場の先輩たちには、揶揄われるがさして気にしてはいない。

FRのタイヤではウェットの路面では滑りやすいので、クラッチのつなぎ方はややソフトにした。

アクセルもゆっくりと踏む。

もっとも、3速の800回転でもノッキングすることなく加速はできた。

トルクが大きいせいだ。

5速でもゆったりと走れた。

軽自動車ミラターボやアルトワークスのように忙しなくシフトチェンジしなくてよかった。

早岐からハリオ方面に抜けると、民家が少なくなり田んぼが開けていた。

ヘッドライトには、稲穂が照らし出されていた。

ヘッドライトのバルブは、イエローバルブに変更していた。

普通に流して、やや緩いのぼりから下りに移り、西海橋という標識が目に入った。

ギアをセカンドにして、エンブレして、ブレーキを踏んで左にターンシグナルを下げた。

雨は、霧のように降っていた。

肌寒くもなく。心地いいとさえ感じた。

パーキングの奥のトイレの前で、秋生は車を止めてハンドブレーキを引いた。

keyをひねってエンジンを切ったが、ターボタイマーの3分のLEDが光っていた。

高温のままだとオイルが回らずにタービンが傷がつくからだ。

これをやらないと、オイル上がりから、タービンからオイルが漏れて、マフラーから黒煙を吐くターボー車が多かった。

秋生は、エンジンのかかったまま車のドアを閉めて、自動販売機まで歩いて行った。

缶コーヒーのボタンを押した。

駐車場には、何台かの車が止まっていた。

マークⅡに、チェッイサー、ソアラ、ファミリアとか、そうそうプレリードもあった。

秋生は、自動販売機の横のベンチに座って煙草に火をつけた。

軒が出でいたので、雨は凌げた。

駐車場にいる車のほとんどはカップルといってもいいと思われた。

時間も時間だ、別れを惜しんでいるか、これからの予定なのか、いずれにしろ秋生には関係のないことだ。

また、明日から仕事だと思うと少し憂鬱になるが、人間相手の仕事ではないので神経が参ることはない。


 車のドアが乱暴に閉まる音が響いて、大きな声が響いた。

ほどなく、タイヤが軋む音が聞こえた。

痴話げんかと思ったが、煙草を吸い終えて車に戻った時、違和感があった。

車の横に人影かあった。


 「この車、君の?」


とひどく落ち着いた女の人の声が響いた。


 「ああ、俺のだよ」


と秋生は、答えた。


薄暗い外灯に照らされ、霧雨のカーテンの中に、チェック柄のシャッツワンピースと赤いミュールとワンレングスの女性の姿があった。







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