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孤高なるギエン  作者: ホオジロ ケン
エピローグ
49/49

その名はギエン

 第2セクターの橋の前は、黒煙と火柱が立ち込め、戦車が空を舞う。

 馬型のアッシュが、脳天にそびえる二本角に赤い因子の血脈を形成して、突っ込んでいく。

 正面から迫る光景は、さながら隕石が大気圏で熱を纏っているようで……。


 その一撃は、容易に戦車を吹き飛ばし、空気の爆発は共々兵士を襲っていく。


「俊敏すぎる! アレで逃げられたら私たちじゃあ追い付けない⁉」


「足を狙う! アリス⁉」


「分かってる!」


 光弾が直線に前足を捕え、『バイコーン』は姿勢を崩した。

 突進は止まるが、明確に自分の敵を見据えて、更に強く因子の力を角に集約させる。


「来るかっ⁉」


 風を切る音が鼓膜を不快に振動させる。

 あかつきは刀を構えて、避けられる間合いで地面を滑り込む。同時に足の筋肉繊維を剥ぐために。

 しかしバイコーンは、途端に地を跳ねて刃を飛び越えた。


 空を舞う、エミを狙うために。


『…………っ!』


 回避が、間に合わない。

 アリスが相手へ狙撃を試み、エミが至近距離で銃口で迎え撃とうとしたその瞬間――。



 バイコーンの頬に、拳がめり込んだ。



「あ、れ……は⁉」 


 スコープ越しで、アリスは援護を忘れ去る。

 バイコーンの悲鳴が天から引きずり降ろされ。


 そして介入者は、静かに――人々の俄然で堂々と立ち構える。


 深紅の炎を瞳として宿し――。

 たすくは、彼らの前に立つ。




「人型、アッシュ……」


「生きてたんっすか!」


「ちょ~びっくりなんだけど……」


 フローラチルドレン共々、他の兵士たちにも激震が走った。

 中には、静かに歓喜する者も。


「暁君……援さんが――」


 地上に降りて一直線に暁を目指すエミ。

 今にも泣き出しそうに、親身を打ち震わして。


「たす、くさん……生きて」


「違うだろエミ。今のアイツをそう呼ぶのはさ」


「え?」


 暁はただ静観していた。

 あらゆる感情を押し殺して、彼はアッシュとしての力を振るう友へ、その姿を刻む。


「アレがアイツが目指した力ならば――俺たちは別の名で呼ぶべきだ。アイツの『もう一人の姿』を」


「それって……」


「ああ……奴の名は――」


 立ち上がるバイコーン。

 それを前に構える援は、燃え盛る炎を結晶に凝固させて、構えを取る。



「『ギエン』だ。例え一人でも屈強な怪物に立ち向かう、孤高の戦士。孤高なる……ギエン」



 ギエンは地を蹴った。



 目の前の人々を救うために、その意思はネクタル因子の光へ返還させて。


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