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76.ヒメコの疑念

 またヒメコがトイレへ行った隙にマサキが近づいてきたら、質問攻め間違いなしだ。


 これではたまらないので、シオリは頃合いを見計らって席を立ち、音も立てずに出入り口へ向かった。背中にマサキの視線を感じながら、セバス君に現金を支払い、扉を開けてもらって店から脱出する。


 まさか、ヒメコを置いて自分を追いかけてこないだろうと思ったが、安心できないので駆け足で廊下を走り、階段を駆け上がった。


 振り返って階段下を見たが、マサキの姿はなく、足音も聞こえない。シオリは、安堵の胸をなで下ろすも、用心のため早足で立ち去った。



 翌日、後から追いかけると約束したミキのために、AI新書店別館の例の左奥にあるテーブルに着席し、向かいにポーチを置いたシオリは、先にジンジャエールを注文して恋愛物の短編を書いてもらっていた。


 鉄扉が開く音がして、こちらに足音が近づいてくる。ミキにしてはコツコツと高い靴音がするなぁと思っていたら、衝立の後ろからヌッとヒメコが現れた。今日は、フリフリのついたドレスっぽい服装だ。


 彼女は、不愉快極まりないという表情を見せ、口をひどく歪める。慌てたシオリが、


「あっ、すみません――」


 そう言って席を立とうとすると、向かいの長椅子にヒメコが腰をドカッと下ろし、置いてあったポーチを手のひらで邪魔な物でもあるかのように横へ叩いた。


「ちょっと()きたいんだけど」


 彼女の剣幕に気圧されたシオリは、体を硬直させた。周囲の客は、衝立から顔を出して固唾を呑んでいる。


「あんた、マサキのなんなの? まさか、元カノ?」

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