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74.来店は本以外が目的
同意を求めるマサキだが、シオリが横を向いたままなので、肩をすくめて軽く睨んだ。
「その先輩、AIに興味があってね。もちろん、僕もだけど。先輩が、この店にあんまし来れないから、お前たちが行って調べて来いと。白羽の矢が立ったら、行くしかないっしょ」
「何を調べにですか?」
「ノーコメント。企業秘密は、僕ら学生も守らないとね」
「そうですか。現地のリサーチに来ているのですか。新作の本を読んで楽しむのではなく」
「ま……否定しないけどね」
「言い換えると、当たってるからですね」
「シオリちゃん、手厳しいねぇ」
「事実を言っているだけです」
「ねえ、ここで本を誰が書いているのかなぁって、興味ない?」
シオリは、目が泳いだ。
「あれぇ? 知ってる系?」
マサキは、上目遣いにシオリを見て口角を吊り上げた。