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73.垣間見える先輩の意図

 目が潤むシオリは、マサキから視線をそらす。それを、感動の再会と勘違いするマサキは、悦に入った表情を見せた。


「いやー、再会できて嬉しいよ。そう思うよね? ね?」


 シオリは答えない。それを、感極まったと思ったマサキは、シオリを(のぞ)()んでニヤニヤと笑う。彼の表情を横目でチラッと見たシオリは、こんなゾッとするほどの笑顔を見たことがないので背筋が寒くなった。


「今通っているT大学は、同じ高校からの同級生はもちろん、先輩も後輩もほとんどいないから寂しくてね。道歩いていても会わないし。こんなところで会えるとは、運命的な?」


 T大学は、シオリの出身校の生徒がほとんど進学出来ないほど高い偏差値の大学。そこに入学出来たと自慢しているマサキは、語りながら得意顔を輝かせる。もう偽マサキに思えてきたシオリは、視線をそらしたまま、不快そうに再質問した。


「ヒメコさんとここへ何しにいらっしゃているのですか?」


「そこんとこ、こだわるねぇ……。嫉妬的な?」


「嫉妬ではありません」


「じゃあ、何かな?」


「単なる質問です」


「顔が怖いよ。彼女とは何もないから、気にしない気にしない」


「そうではなく、ここは本好きの人の中でも紹介された人のみ入れるお店です。先輩とヒメコさんは、本が大好きなのですか?」


「そっちか」


 短いため息をついたマサキは、タバコの煙でも吐くようにフーッと息を吐いてから、少し考えて白状する。


「……ゼミの先輩で、とある企業に就職した先輩の紹介で会員になっただけ。それだけだよ」


「どこの企業ですか?」


「ごめん。ノーコメント」


「では、本はお好きではないのですか?」


「まあ、漫画や雑誌は読むよ。一応、本好きってとこかな。嫌いなら読まないよね?」


「ここは、そういう本を置いていません」


「本は本じゃんか」


「文学青年くらい本を読むのですか?」


「シオリちゃん。言い方、ずいぶんきつくなったねぇ。仮にも先輩だよ。……はいはい、ぶっちゃけ、付き合いだよ、付き合い。先輩に逆らえないし。わかるよね? 特に、志望する会社に就職した先輩とかは」

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