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68.何かにつけて気に触る

 普段は大人しいシオリだが、よほど腹に据えかねたのだろう。彼女は、衝立を挟んで背中合わせに座る女性に『いけ好かない女』という烙印を押した。


 頭に血が上り、拳を握り、歯がみするシオリだが、ふと心の中でもう一人の自分が冷静に語りかけてきた。


(これって、()()じゃないの?)


 タバコの一件から始まり、周囲の客に迷惑なほど声がデカいこと、席を譲って当然という顔をしたこと。恋愛物がいけているというのはオマケだが、とにかく、無性に腹が立つほど気に入らない行動を取る女へ怒りを向けていた。


 だが、本当は、憧れの先輩を盗られたことへの(ねた)みをぶつけていたのではないか。それを女の行動の非常識さで隠していたのではないか。


(きっとそうね……)


 シオリは、ふと笑う。自分が、子供みたいだと。


(それにしても、あんなことを言った先輩がなぜこの店に?)


 あんなこととはもちろん「文学少女は苦手なんだよな」である。小説が大好きの後輩に向かってそう言うなら、自分は小説が嫌いのはず。漫画とかエンタメ雑誌ならいいのかも知れないけれど。


 誰かの紹介を受けて彼がここの会員になったということは、紹介した会員の目が節穴だったのか。


 それとも、あの女が誘ったのか。誘われて断れないからノコノコついてきて会員になったのか。


 ここはデートの場所ではない。読書をする場だ。本が大好きな仲間が集う場所だ。


 神聖な本屋を汚された気分になって、またイライラが始まったシオリは、喉が渇いてきた。


 そこで、衝立からちょっと顔を出してセバス君の方を見て「注文をお願いします」と手を上げたところ、後ろからも同じ言葉が聞こえてきて被ってしまった。


 すると、セバス君はシオリの方へやって来た。彼女は、ドキドキしながら注文をする。


「あのー、オレンジペコ――」


「ちょっとぉ! こっちが先よ! どこ見てんの!?」


 シオリの背後からセバス君へ向かって女の声が飛ぶ。すると、セバス君が女の注文を取りに行った。


 再びシオリは、歯を食いしばって悔しがった。

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