57.試される実力
「どのコースを指定するのが多いですか? やはり、筋書き指定コースですか?」
シオリは、やはりそこに触れるのかと、天を仰ぎたくなる気分だった。
あらすじに挫折したことを告げてしまうと、ユキの落胆する顔を見ること間違いなし。今までの楽しい会話が、そこで強制終了してしまうかも知れない。
かといって、作り話はいずれ綻び、嘘が露呈する。こちらの方が、反動が大きくて危険だ。
「お店のAIがどれほどの実力なのか知りたいので、要素指定コースをいろいろ試しています。いずれも素晴らしい小説に仕上がるので驚いています」
明らかにはぐらかした回答だが、事実ではある。ユキは、回答を熟考しているのか、沈黙が続く。そうしてから、
「筋書き指定コース、試したことはありますか? 実力を試すなら、そっちのコースですよ」
鋭いところを突いてきた。シオリはギョッとするも表情には出さないように堪えて、口角が下がり気味の笑顔で切り返す。
「試したことはあります」
それも事実だが、一度も成功していない。ここで自信のなさが表情に出たらしく、ユキの視線がシオリの顔に張り付いた。表情の奥にある隠し事でも覗き込もうとしているのだろうか、ジッとして無言が続く。
ポーカーフェイスが苦手なシオリがそわそわしていると、
「失礼ですが、拒否られたとか」
シオリ自身の作家としての実力を探っていると思えてきたので、いつ白旗を揚げようかと迷っていると、ユキがフッと笑った。
「あれ、コツがあるんですよ」