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54.進学への不安

「やっぱり、そうですよねぇ」


 二度もユキにそう言われると、メンタルが弱いシオリは止めを刺された気分になり、さすがに笑顔が消えた。


 ユキが少し悲しい目をして、視線を下げる。


「大学行くと勉強が忙しくて、就職活動もあって、時間が取れないですよねぇ」


 同情を寄せているような発言だが、大学生のシオリに将来の自分自身を重ねているようにも思える。


「忙中閑ありで、空いた時間は読書で埋められますよ」


 このシオリのフォローはユキには響かず、うつむいたままボソボソと語り始めた。


「親が大学に行けとうるさいのです」


 よく聞く話で珍しくもない。シオリも『私も高校の時はそうだった』と言葉を噛みしめる。


「大学では、自分がやりたいことに時間を取れない気がするのです」


 ユキの弱々しい声が徐々に大きくなり、早口になっていく。


「単に、大企業とかに就職するための階段を上るだけで入学するのなら、時間の無駄。実生活で活かせるのは、高校までの知識でいい。いや、それすら要らない。物理とか(ばけ)(がく)とか、何の役に立つのですか? 無駄な知識を詰め込むくらいなら、好きな本をたくさん読んで、それを糧に書きたい小説をたくさん書く。その時間が欲しい」


 一気に真情を吐露したユキに対して、シオリは(うなず)くしかなかった。


 親の立場に立った反論――シオリ自身もよく聞かされた言葉――を喉の奥へ飲み込む。慰めの言葉を添えた後「でも、無駄な知識はないですよ」と言ったところで、今の彼女には火に油を注ぐようなもの。親の援護射撃は、ユキにとって百害あって一利なしなのだ。


 ただ、知識は本当に不要なのか?


 小説を書くときだって高校の知識は要るのではないかとシオリは思ったが、そのうちユキから「あなたは、なぜ大学へ行ったのですか?」とこっちに振られて言葉に詰まることを警戒し、先手を打つ。

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