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53.作家であるとは言えない

 ユキの輝く(そう)(ぼう)は、自分が作家であることを明らかに期待している。そう思ったシオリは、表向きはにこやかな表情を崩さず、内心では大いに思い惑う。


 本当は、ユキとライトノベルの話題で盛り上がりたかった。同じ趣味を持っていれば、相手に近づける。そうすれば、ユキの思い――作家の情熱とか、もしかしたら作家の世界の話なども聞くことが出来るかもしれない。


 でも、それは、シオリの一方的な読者目線での作家への強い関心だった。


 ユキは違う。同じ文筆の世界で活躍している仲間を求める目をしている。



 もちろん、シオリは小説を投稿していない。


 あらすじは書こうと思っていたが、小説どころかそれすら書けない才能のなさに自己嫌悪し、一文字も書けずじまいだった。当然、メモなんか、開いて見せるページなどない。


 でも、逡巡することは危険。この()が答えになるからだ。


「……投稿したいと思っているのですが、なかなか忙しくて」


 いかにも残念そうな言い方で、それまでの沈黙が言うか言うまいか悩んでいたような演技をする。


 かなり背伸びをした発言が口を衝いて出て、シオリ自身が驚いた。ユキは、ほんの少し口端が下がったが、目はまだ期待をしている様子だ。


「社会人……いや、大学生の方ですか?」


「大学生です」


「勉強、忙しいですよね」


 皮肉っぽい響きはない。同情しているように思える。


「忙しいですが、いっぱい読書をしていますよ」


「でも、投稿する時間はないのですよね?」


「……ええ」


 ユキは、痛いところを突かれたシオリの力ない言葉を聞いて、ため息を漏らしてつぶやいた。


「やっぱり、そうですか……」

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