表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/121

49.自分のお気に入り席を他人用に空ける

 翌日の午後、シオリはまたミキに振られて一人でAI新書店別館へ向かった。大雨だったせいもあり、空席情報を見ると三人が各テーブルに着いている。さすがにこの天気では出足も鈍るのか。


 二人で1テーブルが埋まっている箇所がないので、ユキとカンナがいる可能性はない。しかも、ユキとシオリがバッティングするテーブルは空いている。


 シオリはそれでも心配なので、小走りで電気街を歩き、店に滑り込む。セバス君の「お好きな席へどうぞ」の言葉に安心し、思い出のテーブルを目指す。


 ところが、座る段になって彼女の心に迷いが生じた。どちら側の席に座るべきか。あるいは、このテーブルは空けておいて最初から他のテーブルへ座るべきか。


 もし昨日のように壁に背を向けて座ると、ユキのお気に入り席を『これは私の席です』と主張しているようなもの。だからといって、向かい側に座るのも『座りたいだろうから、空けときましたよ、どうぞ』と言っているようなもの。他のテーブルに移動するのも、似たり寄ったりだ。


「どうぞ、おかけになってください」


 なかなか座らない客を心配したセバス君が、後ろから声をかけてきた。


「は、はい」


 背中を押された気分になり、(とつ)()に間近な席――壁を向く側の席に着いた。ユキのお気に入り席を譲った形だ。


 彼女は、『この天気じゃ、ユキさんは来ないだろう』と自分に言い聞かせ、空いているお気に入り席に目をやる。


(こういうときに、ミキがフラッとやってきて向かいに座ってくれればいいのに……)


 そう思いながら、ブレンドコーヒーを注文し、やおらスマホの操作を開始する。今流れているBGMはパッヘルベル作曲のカノンだが、この曲がお気に入りの彼女は、鼻歌でユニゾンしながら体を左右に揺らした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ