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43.競争
歩道に出来た人の流れは整然としておらず、シオリは流れを乱す人々を避けながら早歩きすることになった。気持ちだけは歩みより先を行くも、店先で人だかりが出来ていたり、前を歩いていた人がクルッと向きを変えてこちらに向かって歩いてきたりと、邪魔が入るので思うように早歩きが出来ない。
結局歩く羽目になったシオリが、雑然とした人の流れにイライラして隙あらば人の前に出ようと狙って歩いていると、白いセーラー服に紺色のミニスカートの女子高生風の子が、前の方でシオリと同じことをしているのが見えた。
その子は頭に赤いリボンを付けて紺のショルダーバッグを脇に抱え、常にシオリと同じ方向を歩いている。角を曲がるのも同じだ。しかも、スマホを手にして画面をしきりに覗いている。履いている靴から察するに、女子高生らしい。
(まさか……あの店に行く子じゃないわよね?)
疑うと、気になって仕方ない。
シオリは、その女子高生が前方からやって来た集団の前で立ち往生している隙に追い越して、あと少しでたどり着く目的のビルへと足早に急いだ。