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42/121

42.後から入って相席になりたくない

 午後の退屈な授業がようやく終わった。


 終わる前にもうテキストやノートや筆記用具を片付けて準備万端のシオリは、チャイムと同時に席を立ち、バイトで急ぐ風を装う。そうして、今日はミキが来ていないサークルの部屋に迷うことなく背を向けて、駆け足で地下鉄の駅を目指す。


 経路検索のアプリが勧める最短コースを選択するが、大学から電車を二本乗り継ぐのがもどかしい。しかも、駅間の連絡通路が長くて、本当に最短なのか疑わしく思えてくる。アプリが正直に分単位で積算することで割り出したお勧めルートは、必ずしも人間の時間感覚に合わないものなのだ。


 電車内でスマホから店の空席情報をチェックすると、イライラが募る。一人、また一人と着席していくのだ。もちろん、1テーブルに一人ずつ。


(相席なんかイヤ。詰めてくれればいいのに……)


 そう思う気持ちもわかるが、セバス君が商売上手だとして、一人で来店した客に対し、予約席でもないのに空いているテーブルを残して相席を巧みに勧め、客を詰め込むことはないだろう。


 焦るシオリは、電気街に到着すると、人混みを掻き分けてビルの地下を目指す。


 まだ1テーブル空いているので今がチャンスと思いきや、念のためもう一度見ると、全テーブルが埋まった。


 急に減速した彼女は、已んぬる哉という表情を路上で見せて、他の通行人より遅い足取りになった。


(どうしよう……。今更ここまで来て、帰る?)


 諦めきれないシオリは、画面の再表示を繰り返す。すると、1分後に、幸運かな、思い出のテーブルが空席になった。小躍りしたい気分の彼女は、先を急いだ。


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