40.作品の評価付け
メールを送信したシオリが今か今かと返信を待っていると、程なくしてミキからのメールが受信ボックスに届いて、スマホのスピーカーがポロロンと音を立てた。待ってましたとメールを開くと、
『ごめん。バイトで行けないから、堪能してきて』
体が固まったシオリは、膨らんだ期待感がすっかりしぼんでしまい、心の中を広がる寂しさに吐息を漏らす。
シオリは、なんだかんだ言われてもミキと一緒にいると心が落ち着く。彼女がニヤけ笑いで口にするちょっぴり意地悪な言葉には全く悪意がなくて、漫才の相方のツッコミみたいなものだから、それに対して言い返してもお互い喧嘩にはならない。
そんな親友と、またあの店のテーブルを挟んで一緒に読書がしたかった。気の合う者同士、同じ空間で同じ時間を好きな読書で過ごしたいのだ。
(……ま、いっか。バイトじゃ仕方ないわね。明日は一人で行こうっと)
注文に応じて新刊本を書いてくれる凄いサービスにすっかり魅了されたシオリは、すでに禁断症状が出始めている。
そろそろあくびも出てきたので、彼女は寝ようと思ったが、その前に、今日の小説に対して評価付けを行うことにした。
気に入った作品ばかりだったので、気がついたら全部5を付けていた。少し冷静になってオール5を眺めていると、1つは4にした方がいいのだろうかと思い始めた。
誰がどう評価したとは表示されないので人目を気にせず5を付けて良いのだが、バランスというものを考えてしまうとオール5が変に思えてくるから不思議。
(うーん……。自分が指定した要素で素敵な小説が出来上がったのに、5ばかりではおかしいからどれかを無理に4にするって、どうなのかしら?)
結局、悩み抜いた末、シオリは自分の気持ちに素直になって全てを5にした。
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