37.謎の多い本屋
ミキはカップを持ち上げて縁を口に持って行くも、中へ視線を向けるとカップの底が見えたので、すぐに皿の上へ戻した。
「AI新書店別館のホームページは、誰もがインターネットで検索できない。店でセバス君に会員登録された人だけ、特定のURLを直打ちすると表示され、それ以外の人は直打ちしても工事中となる。ここまで話したよね?」
「うん」
「ところが、そのホームページに別館のことしか書いていない。で、先輩と私が別々に『本館ってどこですか?』ってセバス君に尋ねたんだけど、あるともないとも言わずに黙り込む。さっきの、あなたが店長ですか的な質問をしたときみたいに」
「そうなの?」
「先輩と私が手分けしてURLを部分的に変えて、本館のホームページを探したんだけど、全部Not Found。シオリも、たぶん、やるだけ無駄だと思うよ」
「本店がなくて支店だけがある店が昔どこかにあったって聞いたことあるけど」
「まあ、その類いだろうって先輩は言うんだけど、きっとどこかにあると思う。本屋ではなく、あのセバス君を作った会社とかかも知れない」
「それなら、本館というか本部ね」
「それに、まだ不思議なことがある」
そう言ってミキは、再びカップを持ち上げるも、空なのを確認してすぐに置いた。
「紹介制で会員を増やしているけど、そもそも最初は誰なのか? 気にならない?」
「最初って?」
「二番目の客を紹介した人さ。その人は、どうやってこのAI新書店別館のことを知ったのかって」