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33.無難で普通のストーリーしか思いつかない

 ――人工知能は万能ではない。限界がある。


 シオリは、パッと思いついた良いアイデアをあらすじに書き起こして提案したら、それがどんなストーリーでも、途中まででもAI作家が後はなんとかしてくれると思っていた。なにせ、要素を指定しただけで感動的な作品を見せつけられたので、その力量を信じるしかなかったのだ。


 でもそれは、過剰な期待だったようだ。


 今回の失敗は、理論的にあり得ない設定であることを検証するほどSFの知識が自分になかったことが原因だったので、SFを外して他の要素を取り入れることにした。彼女は、登場人物を男女に戻し、あらすじ欄の後半部分を削って少し追加し、以下のようにまとめた。



「とある高校に、(かける)という男の子の転校生がやってきた。主人公の()()は、彼に一目惚れをする。付き合い始めて、デートも何度か行った。ある日、(かける)に『自宅に遊びに来ないか?』と誘われたので()()が行ってみると、そこは小さな病院だった。(かける)は『思い出した?』と問いかける。()()はハッと気づき、青ざめる。そこは――」



 最後まで書かなかったのは、この後をAI作家に一任しようとしたからだ。きっと、王道の展開になり、最後は涙のエンディングとかにしてくれるはずだ。現に、その実力は過去の2作品で見ている。シオリは「うん」と納得しながら頷いて注文を試みる。ところが――、


『ストーリーが書きかけです。この後の内容によって作品が大きく変わりますので、最後まで書いてください』


(ですよねぇ……)


 シオリは、両肘を机の上に突いて手に顎を乗せ、長い息を吐いた。


「今度こそ拒否られたご様子で」


 待ってましたとばかり、ミキがニヤけ顔で声をかけてきた。シオリは、今度はふくれっ面で言い返す。


「なんでわかるの?」


「そりゃ、シオリのことは何でも知っているから」


「読心術でも心得ているとか?」


「いや、流れ的にそうでしょう? 設定の矛盾で夢落ちになったので、矛盾しないようにするには、経験豊富な相手に部分的に任せてみようと試みる。それには、ストーリーを途中で切る。でもね、途中までのストーリーは、拒否られるのさ」


「さては、経験済みね?」


「ハハハッ。鋭いね」


「そのくらい、わかるわよ」


「で、ストーリーをどこで切った? 見せてみ」


「……これ」


 渋々スマホを渡したシオリは、サッとあらすじを読んでプッと吹き出したミキを見て眉を吊り上げた。


「なによ」


「いや、ごめん。……この続きの提案だけど、『幼稚園の時に結婚の約束をした幼馴染み同士だったが、それをすっかり忘れてしまった彼女は、彼が見せてくれたおもちゃの指輪でそれを思い出す』とかどうよ? そこにライバルの幼馴染みも現れて、三角関係に。揺れる女心」


 あっさりミキにあらすじの追加部分を提案されて、シオリはがっくりとうなだれる。


「結局、無難なというか――」


「普通ちゅうか――」


「そんなストーリーしか思いつかない私が――」


「情けないってか?」


「……だから、AI作家にお任せになってしまう」


「ま、諦めず、家でよく考えてから再挑戦したら? ここでしか注文出来ないからってエイヤーでストーリーを決めたら、読んでつまらない小説になっちゃったなんて、それこそ自己嫌悪に陥るよ」


「確かに……」


 結局、シオリはミキの提案通りにすることを決意し、要素指定モードの画面に戻った。


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