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28.AIが指定要素から決定した意外なタイトル

 近未来の高校を舞台に、憧れの先輩との恋愛話かと思っていたら、『恋するスカーレット艦長の冒険記』ときた。シオリは想像していたのとまるで違うタイトルをAIが決めたことに対して大いに面食らう。


 完全お任せコースではなく要素指定コースにしたのは間違いない。だから、自分が指定した要素は必ず入るはず。「冒険記」も「海洋」も指定していないのに、それらが全面的に押し出され、自分が指定した要素は「恋」の一文字で片付けられている。


 焦ったシオリは、これが今の世の中で流行っているのかスマホで調べてみたが、毎月出版される本の数が膨大なので傾向がつかめず、読書のトレンドのキーワードにもなかった。それで、AIが勝手に要素を挿入してきたのか、はてまたAIの回路に故障でも起きたのかと疑点を店に問いただしたくなった。


 でも、セバス君に迫る勇気はなく、ミキに相談すると「ちまたで流行っているのに知らないの?」と笑われそうでイヤだ。


 ならば、タイトルだけではなく、AIが自動で生成したあらすじにも自分の指定した要素がスルーされたのか確認するため、あらすじに目を通した。


 それにはこう書かれていた。



『大航海時代をテーマとした海洋系VRMMORPGで、憧れの(みず)()先輩が地方艦隊編成のために艦長を募集しているとの噂を聞いた(とも)()は、親友の(ここ)()と一緒にゲーム内で先輩を捜していると、ゲームのベテランらしいイケメンの船長が三人も仲間になりたいと志願してきた。


 彼らにドキドキしつつゲームを進めていくうちに、文化祭の話題を振ったときの反応から、どうもリアルな彼らのうち二人は今まで口を利いたことがない()()()な同級生、残りの一人は片思いの男子に思えてきてた。


 ついに最後の海域である東アジアへ船を進めた(とも)()達は、鎖国の日本を開国させて聖剣を手に入れた後、大阪で(みず)()先輩に遭遇。そこで一致団結して討伐することになった相手は、チート能力を持ち、長崎を拠点に暴れ回る最凶最悪の艦隊だった』



 シオリは、長いあらすじの中に自分が指定した要素が「ハッピーエンド」以外全て入っていることに感嘆した。ハッピーエンドはないが、おそらく、最凶最悪の艦隊を沈めた後で(みず)()先輩と主人公の(とも)()のリアルの世界での関係が深まって……とかで終わるのだろうと想像できる。


(ちゃんと指定した通りになっている!)


 指定した要素からは想像も付かない小説が出来上がった。どのようなストーリーに仕上がっているのか、とても気になる。これは、今すぐ読まずにはいられない。


 シオリは、小説の完成をミキに報告するのも忘れて、むさぼるように読み始めた。

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