25.アンドロイド店員自身がサーバー?
「でも、なぜそんなことが出来るの? 検索して誰が見ているのかまで、わかるの?」
「わかる。だって、店内からスマホでアクセスしているでしょう? その時に、スマホの端末IDだかの情報が裏でサーバーに読み込まれる。ホームページ検索してこの店のページへジャンプする時、店内と同じスマホで検索するから、裏でID情報が飛んで識別できる」
「マジで……。2台持ちの場合は?」
「だめ。スマホ1台のみ」
「PCからのアクセスは?」
「それも個人情報を登録した1台のみ。パソコン買い換えたら、やり直しだね」
「スマホの買い換えは?」
「うーん……そこまでは聞いていない」
「聞いていない?」
「実はこの推測、先輩の受け売りなんだ」
てへぺろと笑うミキを見てシオリは嘆息を漏らす。
「なんだ……。やけにミキが詳しいから訊こうと思っていたのに」
「何を?」
「AIがこのお店のどこで動いているのか、サーバーならそれがここのどこにあるのか、別館じゃなくて本店にあるなら本店はどこにあるのか、とか」
「ほー。AI新書店別館の核心に迫るとな」
「そこまで大袈裟じゃないけど」
「ここでしか注文出来ないからここで小説を書いているはずで、どこでどうやって書いているのか、おぬしは知りたいと」
「そう」
「期待しているところ悪いんだけど、それは先輩も知らない。それどころか、本店がどこにあるのかも知らないんだ。きっとサーバーがあってそこで人工知能が動いていて本を書いている、というのは想像が付くけど、それがどこにあるかまでは……」
頭を掻くミキを見て落胆したシオリは、何の気なしにセバス君の方を見た。
彼は正面を向いたまま、体が硬直したかのようにジッとしている。瞬きすらしない。
マネキンのようになった彼に目を奪われていると、不思議なことに、人間味が薄れてきた。美形の男子を見てドキドキする気分まで薄れてきて、心臓の鼓動が徐々に平常時に戻っていく。
――彼はアンドロイドと言うよりも、機械そのもの。
その時、彼女は脳裏に閃いた。
――彼自身がAI新書店別館のサーバーではないか?
そんな突拍子もない発想を打ち消さないシオリは、なおもセバス君を凝視していた。