22.要素の組み合わせに悩む
シオリは、要素指定コースの画面を開くと、改めてため息をついた。あまりに数が多くて、何を指定して良いのか迷うからだ。
こうなったら「神様の言う通り……」と唱えながら指先を適当に動かして要素をランダムに指定する方法もあるが、それでは読みたいストーリーに絞れるかはわからない。もちろん、完全お任せよりはまだましだが。
1、2分悩んで、結局、今ちょうど興味のある要素を指定するという至極当たり前の結論に達した彼女は、「ハッピーエンド」「片思い」「幼馴染み」とテンポ良くチョイスしていったが、これでは先ほどの小説と似てくるだろうから、「幼馴染み」を他のにしようと思って探していると「憧れの先輩」が目に止まった。
(憧れの先輩……)
突然、心の中に暗雲が漂う。マサキ先輩の顔が浮かんできたので、小さくかぶりを振る。
(気にしたら切りがない。この単語にいちいち条件反射的にならないようにしよう)
気持ちが落ち着いたところで、ミキの言葉が頭を過った。
(SF漬け……、今日のAIは期待できそう……か)
ミキが夢中になるのなら、SFも試してみたくなる。でも、詳しくないので何がお勧めなのかわからない。かといって、ミキに「今の流行のSFは?」と尋ねるのも何か言われそうでイヤだ。それで、良い質問を思いついた。
「ねえ。さっきのは当たりって、ミキが読みたいものとジャストミートだったの?」
「そだよー。ってか、当たりってそう言う意味じゃない? 普通は」
「だよね……」
「なぜ、ここでそれを訊く?」
「どんなSFをAIから提案されたのかなって――」
「さては、おぬし、要素の選択に迷っておるな?」
それまでスマホに目を落としていたミキが、サッと上目遣いになって口元がほころんだ。