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21.行動分析

 客を個人ごとに分析している。それは、ネットで商品を注文する際に普通に行われていること。なので、シオリはミキの発言に対して、何ら不安を抱くことはなかった。


 ただ、「監視」という言葉だけが気になった。おそらく、綿密に行動の履歴を取って分析している行為が「監視」に思えたのか、シオリの「動向」の単語から「監視」を連想したのだろう。


「ミキはさ、もし監視されているのが事実だとしても、この店で本を注文するの?」


「するよ」


 間髪入れずに言葉を返すミキに、シオリは意外だという顔をする。


「なんで? 監視って、良くないことが起こらないよう見張ることでしょ?」


「……そうか。そっちに行っちゃうか。だったら、観察? ちょっと意味合い的に弱め。でも、結果的におんなじ」


「観察ねぇ……。具体的に言うと、情報収集から始まって、情報解析して傾向を分析して。……何を言っても同じね。早い話、細かく見られていることには変わりないわ」


「でもね、そのおかげで、好みにしっかり合わせてくれて、満足いく小説を書いてもらえるし、的確なレコメンドの恩恵を受けられる。それって、いいことじゃない?」


「いいこと?」


「見方を変えるのさ」


「……そうね」


「いくら人工知能っていっても、一回こっきりの情報収集で、客が何に満足するかなんてわかるわけがない。人間って、そんな単純じゃないし。……結局、ずーっと行動を追いかけるしかない」


「確かに」


「それと、ちゃんと()()もしている」


「どんな?」


「筋書き指定コースで、タイトルやあらすじにヤバいことを書くと、執筆を拒否される。要素指定コースで自由入力欄にヤバいこと書いても」


「試したことあるの?」


「利用規約に書いてある」


「なぁんだ」


「だって、そんなこと書いたら、きっと記録に残るし。調子に乗っていたずらを重ねていると、()(きん)になる」


「それも?」


「それは書いてある。警告を無視して禁止行為を繰り返した場合、会員資格を剥奪し、永久追放って」


「永久――追放!?」


「『再入会をお断りします』だから、永久追放っしょ」


「……ミキの読み替え? ビックリした。ちゃんと利用規約読もうっと」


「それ、重要」


 ここでミキは、ウーンと背伸びをした。


「それはそうと、次どうする?」


「短編なら後2つよね? あっ、ここで中編を頼んだらどうなるの?」


「中編1つは、短編1.5で計算している。だから、ケーキセットの場合、短編3、短編2、短編1と中編1、中編2、中編1のいずれかになる。短編2と中編1で止める人はいないけどね、もったいないし。コーヒー等の飲み物だけの場合は、短編2、中編1、短編1しかない」


「他のコースで中編を試してみる。ミキは?」


「今日はSF祭りにする」


「祭り?」


「SF漬けってこと。さっきのは当たりだったし、今日のAIは期待できそう」


 ミキは親指を立ててウインクをした。

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