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18.AI作家の作品を初体験

 シオリは読み始める前に、一度スマホの画面から目を離した。そして、作者は人間ではなくAI――人工知能だと言い聞かせ、果たしてどんな小説になったのだろうかと期待を大きく膨らませた。


 そこへ突然、シオリの不安が首をもたげた。そいつは、期待が大きければ大きいほどそうでもなかったときにショックを受けるから期待しない方が良い、と(ささや)く。


 こうなると、妄想に坂から転がるような勢いが付いて止まらない。


 これから読む小説は、お金を出すくらいだから、ネットに溢れている機械翻訳された文章ほどひどくはないだろう。でも、人間の手によって書かれていないから、人の温もりが感じられない文章かも知れない。他の単語や表現の方が意味が通るのに、これでは気になって読めないと文句の一つでも出るかも知れない。評価は中の下から下の上、あるいは5段階評価にして2辺りかも、と。


 一度火が付いた不安は、心の中で野火のように広がっていった。


 しかし、シオリは広がるに任せるようなことをせず、グッと堪えて立ち直る。


(なんで、こうもマイナスの方向に考えてしまうのだろう? 悪い方悪い方へと考えが向かってしまう癖をなんとかしなくちゃ!)


 不安を弾き飛ばしたシオリは、深呼吸をして気持ちを落ち着かせた後、再度期待を膨らませてスマホの画面を顔に近づけた。



 AIが書き上げた小説のタイトルは「桜坂」。


 登場人物は、高校一年生の(むこう)(さか) (たくみ)(さくら)() ミク。


 二人は幼稚園からの幼馴染みで、とても仲が良かった。


 小学六年生の時に巧が引っ越すことになる。その際に彼が渡してくれた紙片に書かれた住所へミクが手紙を出すも、宛名人不明で戻ってくる。


 高校一年生になったミクのクラスに転校生がやってきた。それは、ひどくやつれた巧だった。


 再会を喜ぶミクが自分の名前を名乗ると、巧は「桜庭ミク? 誰?」と冷たい目で言葉を返す。昔の思い出話をしても、ミクのことが記憶から消えているらしく、(いぶか)しがり背を向ける。


 ところが、ある日……。



 噛みしめるように読むシオリは、いつしかAIが書いたことも忘れ、物語に引き込まれていった。

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