15.筋書き指定コース
簡単に言うと、筋書き指定コースは、要素指定コースにあらすじとタイトルを指定できるものだ。なので、画面も要素指定コースとほぼ同じ。違うのは、あらすじの入力欄とタイトルの入力欄があることだ。もちろん、タイトルをAIお任せにも出来るが、あらすじを書いた以上、タイトルを他人任せにする人はいないはず。
あらすじは、100字以上1万文字以下で指定できる。タイトルは200文字以下だ。ラノベとかでよく見かける、長いタイトルも可能である。ただ、目一杯書くと本の表紙には不向きだが。
シオリは驚嘆し、うっかり大声を上げそうになったがなんとか堪える。
「こんなにたっぷりあらすじが書けるなんて、ショートショートとか童話が書けちゃう」
「それは無理だね。AIがそれを解析して要素を絡めてストーリーを組み立てるから、投稿サイトにアップするようにそのまま作品になることはない」
「そっか。でも、要素である程度キャラクター作りをして、入力限界くらい詳細にストーリーを書き込んだら、AIが行間に何を埋めるのか――」
「気になる? 試しにやってみたら?」
「時間がかかるから家に帰ってやらないと――」
「それは出来ないようになっている。2次元バーコードから読み取ったURLは、この部屋から退出すると永遠に無効になるから。あくまで、店内でしか出来ない」
「そうなの!?」
「しかも、その入力欄、メモからカットアンドペースト不可だから、手打ちしかない」
「マジで!? ということは――」
「注文作業は、店内でやれってこと」
「嘘……。時間かかりそう」
「今のバージョンではそうなっているけど、要望を上げれば店も考えてくれるかも」
「それまで、家でメモしてここでカキコする」
「コピペの方が断然――楽」
「それはわかるけど、出来ないから仕方ないでしょう? ……ところで、AIが書き上げるのは、どのくらいの時間なの?」
「うたい文句では、完全お任せコースで5分以内。私の経験では、4分越えたことない。要素指定コースで10分以内。これは8分越えたことない。筋書き指定コースは15分以内。こいつはさすがに長くて、いつも10分は超えるけど12分くらいには終わっている」
「だから、コーヒーを飲んで待つのね」
「そゆこと。……じゃあ、だいたいわかった? 注文するよ。飲み物とかのメニューはトップページに行って『お品書き』から表示出来るから、それを見てね。私はケーキセット。ここのチーズケーキ、絶品だよ」
「私もそうする」
今まで待ちきれない様子だったミキは、衝立から頭を出して振り返り、右手を挙げて店員――セバス君――を呼んだ。
シオリも首を伸ばして、セバス君が笑顔で近づいてくるのを見たが、目が合うと恥ずかしそうに首を引っ込めた。
「ここの営業時間は?」
「10時から18時まで」
「じゃあ……まだ時間はたっぷり――」
「ケーキで籠城すると太るよ」
ミキは、シオリの首から下を見て目を細めて笑った。
営業時間を変更しました。