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12.要素指定コース

 要素指定コースは、一言で言うと、あらかじめ用意されている要素をAIが執筆する小説に入れさせるものだ。これは、完全お任せコースで無限と言っていいくらい大量に作られる小説に縛りを加えると考えてもいいし、シオリの言う通り、範囲を絞ると考えてもいい。


 定食で例えると、完全お任せコースが『店長お任せ』『今日のお勧め』の類いなら、要素指定コースは『好みで一品二品の小鉢を追加した定食』みたいなものだ。


 そもそも、AIに()()()()()とはいっても、AIが『その時の気分』といった感情や『ふと思いついた』といった気ままな思考があるとは考えにくく、()()()()()()で要素を抽出してストーリーを組み立てるはず。


 その規則は「これが今の流行だろう」と広く読者受けすると思われる要素をふんだんに取り入れるという、実にシンプルなロジックかはブラックボックスでわからないが、おそらくAIのバックボーンに()()()()()()が存在していて、それに従って執筆しているはず。


 しかし、その規則に従って、例えば流行の要素がてんこ盛りのストーリーを提案されても、読み手にとってはそれが必ずしも『今読みたいもの』とは限らない。


 そんな完全お任せコースと読み手とのずれを少しでも減らすため、指定した要素を必ず盛り込むようAIに指示するのが要素指定コースなのである。


「具体的には、どう指定するコースなの?」


「それなら、テーブルの上に2次元バーコードが浮かび上がっていると思うから、それにスマホをかざして」


 ミキに促されて二人の間にある濃い茶色の丸テーブルに目を落とすと、綺麗に磨かれた表面に名刺大の白い画面がいつの間にか表示されていて、中央に2次元バーコードがあった。着席する前は表示されていなかったので、着席を見計らって自動で表示されるのか。シオリは目を丸くして、「今初めて気づいた」とつぶやき、スマホをポーチから取り出した。


 言われるままにスマホのカメラでそれを読み取ると、数秒後に『AI新書店別館 注文書』というサイトが開いた。なるほどと思ってスマホを横に()けてもう一度2次元バーコードを見ようとすると、すでに白い画面は消えていてテーブルには自分の頭の影しかなかった。


「私が要素の説明をするより、それ見た方が早いから。ってか、説明できないくらい、めっちゃあるから」


 確かにそうだった。


 シオリは息を飲んで、文字で溢れる画面をスクロールした。

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