114.アンドロイドの再起動
人間の姿をしたアンドロイドが目を開けて倒れているのも不気味だが、こうして急に起き上がるのも不気味で肝を冷やすものだ。
四人を始め、客全員が成り行きを見守るも、セバス君は倒れていたときと同じ表情で前を向いたまま、瞬き一つしない。
ユキが半信半疑の表情でミキへ尋ねた。
「ミキさん。これ……うまくいったんですよね?」
「たぶん、そうだと思うけど――」
問われても確信が持てないミキは、上を見上げた。
「うん、ユキちゃんが抜いたのは、電源ケーブルの方だから、大丈夫のはず。LANケーブルの方でも大丈夫だったけどね」
電源断で無線アクセスポイントが動作しなくなったので、外部からのサーバへの攻撃を物理的に遮断できたはずだが、まだ何かあるのか。
「大丈夫なんだけど……どうしちゃったのかなぁ?」
ミキが心配していると、セバス君が正面を向いたまま、急に独り言をつぶやき始めたので、四人が同時に仰け反った。
「再起動エマージェンシーモード……OK。
メモリテスト…………OK。
データロード……完了。
可動部テスト……OK。
無線LAN接続……失敗。
ファイヤウォール……OK。
定義パターン最新化……未完了。
ログ退避……完了」
そう言い終えたセバス君は、ゆっくり立ち上がる。
全員の注目を浴びる中、彼は左腕の袖からLANケーブルを取り出し、近くにあった有線LANのジャックにそのケーブルのプラグを挿した。
そうして、正面を向いて、またつぶやき始めた。