113.作戦成功
懸命なユキの行動を見守るカンナも客達も、拳にグッと力が入る。
目一杯背伸びをしてついに指が線に届いたユキは、抜くべき線は2本か1本かわからなかったが、ユキが「何でもいいから引っこ抜け」と言っていたので、今指の腹に触れている線を指の関節を曲げて下に引っ張った。
一瞬だが、線が反発して指に食い込むも、ブチッという音がしてその抵抗が弱くなった。
やったと思ったのも束の間、ユキは下に引っ張ったことで体のバランスを失い、シオリとミキの首の付け根付近にあった両足の位置がずれてカンナに向かって落下。カンナはユキを抱きかかえるようにして後ろへ崩れるように倒れ込む。
「やったね、ユキ! 線が抜けたよ! ぶらんぶらんしてる!」
喜ぶカンナは、ユキを強く抱きしめた。
「二度とやらんぞ……」
そう言ってミキがヘナヘナと座り込み、シオリは安堵しながら膝を折った。
客たちは拍手喝采で、四人の勇気ある――多分に強引な――作戦を称えた。
シオリが、背筋を伸ばして向かい合うように立った方が高くなったのではないかと作戦を振り返るが、ミキは手を左右に振って「こんなこと、もう二度とやらないからいい」と苦笑した。
と、突然、セバス君の上半身がムクリと起き上がる。
近くにいたシオリ達四人は、彼の予期せぬ行動に仰天して脇へ飛び退いた。