110.組み体操の三人タワー
ミキは「さて誰がいいか?」と店内を見渡す。カンナは、客をキョロキョロ見るミキを不思議そうに見つめた。
「ミキさん。誰がいいかって何をしているんですか?」
「背の高い人を探しているのさ。目算だけど、この高さじゃ、立っている誰かの肩の上にさらに立たないと無理。難易度高いけど、そんなことが出来そうな二人……はいないか」
確かに、今いる客は全員彼女たちより年齢が上の女性で、しかも背の高い人はいない。ミキたち四人の背丈も似たり寄ったりだ。
すると、カンナが指をパチンと鳴らした。
「ピラミッドならいけるんじゃないですか!?」
「ほうほう」
「ざっと見て四段かな? 一番上は、立てば楽勝」
「本当にそんなことをして大丈夫か不安もあるが……。なら、うちら四人以外に六人必要だけど、誰かやりたい人!」
ミキが挙手しても、誰も手を上げなかった。女性たちは、遙か昔に運動会とかで苦労した経験を思い出したのであろう。
「ピラミッド、却下。他には……」
今度はシオリが手を叩いた。
「肩の上に立つ高さにしたいなら、三人タワーは?」
「「おおおおおっ」」
カンナとミキが、ステレオサウンドのようにシオリの左右から感嘆の声を上げた。