108.無線装置の電源を切れ
部屋中に疑問符が溢れる中を、ミキが指を立てて推理を披露する。
「つまり、今、ここのAI新書店別館にあるサーバーが、インターネット経由で外部からのサービス拒否攻撃にさらされている。それで小説執筆のサービスがめっちゃ遅くなっているのさ」
ミキはそう言った後で、万一セバス君がサーバーであることがバレたとしてもこの説が間違いだと追求されないことを頭の中で確認する。その時、ミキの脳裏に次の想定質問が浮かんだ。
『なら、なぜサーバーがDDoS攻撃されてアンドロイドの店員が倒れるのか?』
その答えには、ついさっき思いついた理由がセバス君とサーバーとの関係を切り離すためにも必要だ。彼女は想定した質問を回避するため、その理由を追加した。
「サーバーが攻撃されて処理が重くなり、アンドロイドを制御している何かの処理が遅くなって、二人が倒れたんだ」
ミキの言葉に、客達がホホーッと感心する。しかし、ミキは違うことを考えていた。
(きっと、セバス君は、超絶頑張って攻撃に耐えていたんだろうなぁ。それで動きが鈍くなった。最後には、限界が来て倒れてしまった)
ミキの言葉を聞き終えたシオリは、またセバス君の方へ顔を向ける。すると、彼が口を動かし始めたので、その声を聞こうと左耳を近づけた。
「切れ……無線……電源……」
再び、シオリが大声でセバス君の言葉を復唱する。
「切れ、無線、電源」
すると、ミキが困惑顔になり頭を掻いた。