105.原因不明の事態
「ヤバい! ついに故障したみたい!」
ミキがそう叫びながらしゃがみ込むと、客が次々と立ち上がってこわごわ近づいてきた。そして、倒れたセバス君を囲む三人を遠巻きに囲んでザワザワし始める。すると――、
ガラガラ ガシャン!
ドスン!
扉の左にある壁の向こうから、皿みたいな物が割れる悲鳴に似た音と何かが倒れる音が混じって聞こえてきた。
セバス君がいつも立っている位置の左に真四角の木製の窓がある。音はその奥からだ。おそらく、厨房で何かが起きたに違いない。
カンナとシオリが互いに顔を見合わせていると、即座にミキが立ち上がり、その窓に手をかけて上に持ち上げた。そうして、穴の中へ頭を突っ込み「大丈夫ですかー!?」と声をかける。しかし、何も反応がない。
そこで、彼女がさらに奥へ頭を突っ込むと、
「うわっ! 誰か倒れている!」
驚くミキの後ろからカンナが「誰が!?」と問いかけると、
「白い服を着た人! いっつもコーヒー出す人だよ!」
ミキの報告に、店の中で騒めきが波状をなして広がった。
誰もが、この店にはアンドロイド店員一人と厨房の奥で胸と腹しか見えない白衣の人物しか見たことがない。その二人が倒れたというのだから、ゆゆしき事態である。
ミキは腕組みをして口をへの字に歪める。
カンナは「どうしよう……」と客全員の声を代表し狼狽える。
シオリはただ呆然と、倒れたセバス君を見つめていた。