103.書店のサービス全体が遅い
セバス君は壁際に立っているが、一見すると、問題はなさそうに見えた。
でも、なんとなく変だ。彼に顔を向けると、いつもなら注文かと思って客へ顔を向ける動作をするのだが、今日はそれをしない。いや、今頃ゆっくりと顔を向けた。
――何かが起きている。
ミキが「シオリ」と呼びかけてしきりに手招きをするので、駆けつけてみると、
「やっぱ、おかしいよ。反応がめっちゃ重い」
「お客さんが多くて、セバス君、お疲れ気味とか?」
「三日前からって言ってたでしょう? なんか、イヤな予感がする」
「イヤな予感って?」
「あいつだよ、あいつ」
シオリの心臓が跳ね上がった。
「……ま、まさか、セバス君を突き飛ばしたから?」
「可能性の一つとしてだけど」
二人がスマホを使って遅延の状況を調べたが、AI新書店別館のホームページのトップが表示するまで数秒かかるのはまだいい方。リンク先のとあるページなどは、開きもしない。
飲み物の注文をすると、セバス君が重い足取りでやって来る。なんだか、入店するときよりも会話がスローモーになった気がする。扉へ向かう時も慎重に歩いているように見える。
故障したら一大事だと、ミキとシオリが額を寄せて心配をしていると、新しい客が招き入れられた。二人は何の気なしに衝立から顔を出して扉の方を見ると、
「あっ、ミキさんにシオリさん」
ショルダーバッグを片手に笑顔で手を振るカンナがそこにいた。