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捨て猫勇者を育てよう ~教師に転職した凄腕の魔王ハンター、Sランクの教え子たちにすごく懐かれる~  作者: いかぽん
第4部/第3章

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第146話

 戦闘が終了し、負傷者には治癒魔法をかける。


 といっても、メイファの腹部への打撲傷のほかには、マリーナとアーニャが軽い怪我を負った程度だったが。


 戦闘不能状態のサハギンバロンは、まずはロープでぐるぐる巻きに縛って拘束した。


 その後にイリスが【月光治癒(ムーンライトヒール)】で腹部の重傷を癒し、【覚醒(アウェイクン)】で目を覚まさせる。


 というわけで、尋問タイムだ。


「さて、話してもらおうか。お前らのアジトはどこにある。連れ去られた村の娘たちがいる場所を吐いてもらおう」


 俺がサハギンバロンにそう問いかけると、四本腕のサハギンはその魚顔をゆがめて笑いはじめる。


「クッ……クククククッ……! そんなことのために、こんな場所まで俺たちを追いかけてきたのか? たった数人の人間のために、ご苦労なことだな。──だがお前たち、本当に我らに勝てるとでも思っているのか? 我らがアジトには未だ、我が二人の兄弟率いる百五十を超える兵と、そして何より『あのお方』がいる。貴様らに勝ち目などないぞ、あきらめろ。土下座して許しを請えば、今なら見逃してやらんでもないぞ?」


 サハギンバロンは、こちらが聞いてもいない情報をべらべらとしゃべり始める。

 虚栄心に突き動かされているようだが……まあ、根本的にアホなのだろう。


 しかし拠点にいるサハギンの数は、百五十超えか。

 数が半端だし、嘘をついているとは思えない。


 となると確かに、こいつの言うとおり、少し厳しいかもしれない。


 百五十超えのサハギンと俺たち六人が真っ向勝負でぶつかったら、戦闘の流れ次第ではあるが、数で圧殺される可能性も想定しうる。


 加えて、こいつと同格のサハギンバロンが二体。

 それに──


「お前は今、『あのお方』と言ったな。それはサハギンの魔王──『サハギンロード』のことか?」


 複数のサハギンバロン率いる大部隊を統率しうるものとして、最も素直に想定されるものはそれだ。


 サハギンの魔王──すなわち、サハギンロード。

 サハギンバロンが瘴気によって変異し、大規模の群れを統率する強力な個体となったものだ。


 魔王が群れを統率し始めると、その群れが世界征服じみた動きをし始める傾向があるので、最近のサハギンどもの動きが活発化した状況とも符合する。


「クククッ……。そうだ。あのお方こそは、いずれはこの海すべてを、いやこの世界すべてを統べる存在なのだ! 貴様らごときに敵うとでも思っているのか、バカめ!」


「…………」


 どうもある程度の知能を持ったモンスターというのは、自分たちの長である魔王を世界最強の存在と思いたがる習性があるらしい。


 まあ魔王だけにサハギンバロンよりは遥かに強いはずだし、百五十超えのサハギンと同時に相手をしなければならないとするなら、舐めてかかれる相手でないのは確かだが。


「つーかあんたさぁ、今の自分の立場ってものを分かってないんじゃないのかい? こっちの手が滑ったらあんたの首が飛ぶんだから、あんまりイキらないほうがいいと思うけどね。──そうは思わないかい?」


 マリーナが海賊らしい獰猛な表情を見せ、戦斧の刃をサハギンバロンの首筋へと押し当てる。


 サハギンバロンの顔がひきつった。


「ま、待て……」


「もう一度だけ問う。お前たちのアジトは──連れ去られた村の娘たちは、今どこにいる。答えろ」


 俺が極力冷たい声で最初と同じ質問をすると、サハギンバロンの魚顔に怯えの色が浮かぶ。


「こ、答えたら、見逃してもらえるんだろうな……?」


「お前が嘘をついたりしなければな。いずれにせよお前には、その場所までついてきてもらうことになるが」


「クソッ……わ、分かった。だからその斧を引きやがれ」


「言い方~。あたいはさっき、立場をわきまえろって言ったつもりだったんだけど?」


「グッ……! ……は、話すから、その斧を引いてくれ……いや、引いてください。お、お願いします」


「おう、それでいいんだよ。素直になったね」


 マリーナはニヤリと笑うと、サハギンバロンの首筋に当てていた戦斧を引いて、肩に担いだ。


 サハギンバロンはホッと安堵の息を吐く。

 そして俺たちが求めていた情報を口にした。


「……こ、この島の東にしばらく行ったところにある孤島だ。そこに俺たちのアジトがある。捕らえた人間の娘たちもそこだ」



 ***



 サハギンのアジトには、このあとバロンに案内してもらうとして。


 一通りの戦後処理と尋問を終えた俺たちは、お宝探索を再開した。


 俺たちの目的はすでに済んだのだが、マリーナとの約束があるし、俺も子供たちもここで帰るというのでは生殺しだ。

 ここまで来たら、お宝探索も最後までやり遂げたい。


 拘束したサハギンバロンは、放っておくのも見張りを立てるのもいろいろと都合が悪いので、引っ立てる形で一緒に連れていくことにした。


 まずは全員で、谷底の道の分岐から、左側の道の先へと進んでみる。


 しばらく進んでいくと、反対側の先にあった光景と同じような風景に出くわした。


 すなわち、谷底の道は断崖絶壁で行き止まりになっていて、行き止まりには大きな石の扉があり、その手前側にはサハギンが数体倒れているという光景だ。


 だが少し違うのは、サハギンを押し潰す大岩は存在しない。

 その代わりに、倒れたサハギンにはそれぞれ太矢が数本、深々と突き刺さっていた。


 サハギンバロンを引っ立てていたマリーナが、その拘束した相手に言う。


「なんだい、向こう側でも罠に引っ掛かったのに、こっちでまたやられたわけ? あんたらも学習しないねぇ」


「グギギッ……! 頭上からの岩には気を付けていたんだ! 今度は真横の岩場から矢が飛んでくるなどとは思わんだろうが!」


「なるほど。キャプテンミスリルも意地が悪いね」


 マリーナはくくくっと笑う。


 まあサハギンたちも、ここまで来て何も手に入れられずに帰るというのも癪だから、少しでも何かを試してみたかったんだろうな。


 さておき俺は、扉とその周辺を調べてみる。


 すると石扉には予想通り、指輪を填め込めるようなくぼみが一つ。


 また石扉の隣にプレートがあり、分岐の向こう側にあったのと同じ文面が書かれていた。


 すなわち、『資格なき者は立ち去れ。さもなくば汝らに大いなる災いが降り注ぐであろう』だ。


「よし。マリーナかアーニャ、指輪を填めてみてくれ」


「分かりました。私が」


 アーニャが自分の手指から指輪を外して、石扉のくぼみに填め込む。


 すると向こう側のときと同じように、石扉とプレートが光る。


 プレートの文章は、『汝、資格の片割れを示した。今一つも示せ。されば扉は開かれん』へと変わった。


「こりゃあ、イリスちゃんが言ってたのでドンピシャみたいだね。んじゃあたいが向こうに行って、指輪を填めてくるよ」


「分かった。──リオ、イリス、メイファ。何があるか分からないから、一応マリーナについていってやってくれ。向こうについたら、誰か俺の通話魔法具に連絡を頼む」


「「「はーい」」」


 というわけで、マリーナ、リオ、イリス、メイファの四人、それとついでに引っ立てられたサハギンバロンが分岐の向こう側へと移動を開始。


 しばらく待っていると、俺の通話魔法具にリオから連絡が来た。


『兄ちゃん、こっちも着いたよ』


「よし。じゃあ指輪を填めてみてくれ」


『うん、分かった。──マリーナ姉ちゃん、指輪お願い』


『オッケー。んじゃ、行くよ』


 魔法通話具の向こうからマリーナの声が聞こえた、その次の瞬間──


 ゴゴゴゴゴッ……!


 俺たちの前にあった石の大扉が、大きな音を立てて開いた。

 また同時に、通話魔法具の向こうからも、同様の音が聞こえてくる。


『兄ちゃん、扉開いた!』


「こっちもだ。──だが扉の先に何があるか分からない。気を付けて進めよ」


『了解。兄ちゃんのほうも気を付けて』


「……ああ。そうするよ」


 俺はふっと笑って通話を切る。

 リオのやつ、一丁前のことを言うようになりやがって。


 そして俺は、こっちの相棒であるアーニャが俺に向かってうなずくのを確認すると、二人で開いた石扉の奥へと踏み込んでいった。


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[一言] 石扉の向こうはなんだろな~?
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