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それから数日後。
私はすっかり元気になったアイリといっしょに、例の喫茶店でスイーツを食べていた。
「ええー、キス!?」
「いきなり叫ぶなよ。バッカなんじゃねーの」
「大丈夫だよ。ここ防音だから」
「いや、私の鼓膜が破れたらどうすんだって話だよ。つーか、憶えてないとか」
「う、うん。お見舞いに来てくれたことは憶えてるんだけど……」
マジかよ。結構ショックデカいな。一応、ファーストキスでもあったのに。
「でも、改めてありがとう。おかげで早く治ったもん」
「そうかいそうかい、よかったね」
「もしかして怒ってる?」
「怒ってねーよ」
「……ひょっとしてファーストキスだったとか?」
口に含んだあんこが飛び出た。察しがよすぎるだろおい。
「ファーストキスを捧げてまで私のインフルを治してくれるなんて……」
「見てくれ的にアイリのほうが王子っぽいけどな」
「私、一生文女ちゃんについていきます!!」
「聞いちゃいねぇコイツって……は?」
「そう、セカンドキスまで有効って話を聞いたことがあるの。今度は時間と場所を決めて、じっくりゆっくりお互い元気なときにしようね♡」
めちゃくちゃ恥ずかしいセリフを顔を真っ赤にして手をもじもじさせていってきやがった。
「わかったから、手をもじもじさせんでくれ。こっちも照れてくるから」
「はーい♡」
……ん? ということは、私たちはもうそのいわゆる付き合ってる関係になってる? つーかさっき、アイリが一生ついていきますとか言ってたような。付き合うってことはあんなことやこんなことをするんだよな……?
「わっ、文女ちゃん、鼻血鼻血!」
アイリにティッシュを鼻に突っ込まれ、膝枕される。しかも仰向け版。相変わらず胸デカいなー。ひとカップぐらいわけてもらいてぇぐらいだわ。しっかし最近、鼻血が多いよなー。こりゃ、毎晩トマトジュースを飲んで寝なきゃ体が保たねーわ。
「文女ちゃん文女ちゃん、血を作るならタンパク質だよ!」
「人のモノローグにツッコむんじゃねえよ!」