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 階段を登り始めてすぐに品のない笑い声と手を叩く音が聞こえてきた。ギャルはとにかくうるさい。独自の言語を話す。化粧で相手を威圧する。特にあの毛虫見てーなつけまつ毛。アイリは最近つけなくなったからいいけど、あんなの近づいて来たら引きちぎってやりたいぐらいだ。

 引き返したい気持ちが胸の中で充満したけど、せっかくここまで来たんだから行くしかない。部屋の前でノックをしてアイリの了承を待つ。


「はーい」


 のどがやられてるんだろう。ガラついた声が飛んでくる。ドアを開けて中に入ると、エアコンをガンガンに効かせているおかげでムワッとした熱気に包まれた。あったかいんじゃなくてクソ暑い。


「わー、超カワイイんですけどー」

「マジマジメな文学少女って感じー」


 2匹のギャルとご対面。肌はおしろいでも塗ってんじゃねーかってぐらい白い。片方は茶髪でショートをアシンメトリー。もう片方は金髪にセミロングで緩くパーマをかけてる。

 おいおい、かわいいじゃねーかチクショウ。パーマのの髪をモフモフしてーよ。こちとら学校の関係で、ザ・真面目な文学少女の様相ようそうだっていうのによ。……まあ、私服に着替えてオシャレすりゃいいんだけどな。今日はそんなヒマがなかったわけで。


「アヤ、ありがとね」


 ベッドに横たわっているアイリが難儀そうに半身を起こして私に言った。……私に言った? アヤなんて初めて呼ばれたんですけどー? 何そのフランク加減は。正直ふだんもそう呼ばれたいんですけど。


「おふたりもお見舞いですの?」


 仕方ないから聞いてやった。もちろん、奴らから離れた位置に座る。


「そーそー。幼馴染の急病とあっちゃ、駆けつけなくちゃねー」

「アタシらバカだからさー、インフルエンザなんてうつんないと思ってるしー」


 ふたりで「ねー」と言い合ってる。うるせー、早く帰れよ。オマエら幼馴染なら家はこの辺だろ。いつでも来れるじゃねーか。私みたいに遠くからお見舞いに来てる人間を優先してしかるべきじゃねーのかよ。


「ねえねえ、アヤの話はアイリから聞いてるよー」

「アイリのこと好きなんでしょー。どーなのどーなの!?」


 いやー、超うぜえ。そしてギャル特有の距離の近さ。こいつらかなり刺激的な香水をつけてやがるせいで鼻がひん曲がりそうになる。よし、ここは一か八かだ。


「あなたたちには関係ありません」


 キッパリと言い切り、薄目でニラみを利かせる。奴らはキョトンとした顔をしているままだ。


「あー、なるほどね」


 茶髪がニヤリとして金髪の脇を小突く。金髪も合点がてんがいったらしく同様にニヤリとした。


「アイリ、アタシたち帰るねー」

「アタシらオジャマみたいな感じだから」

「わかった。今日はありがと」

「じゃ、あとはおふたりでごゆっくりー♪」

「あんまり長くいっしょにいて、インフルをうつされないようにねー♪」


 思いのほかさっさと帰ってくれた。ふふふ、私のニラみが利いたみたいだな。……いや、私の態度ってめちゃくちゃわかりやすいのかもしれん。確かにはよ帰れオーラは存分に漂わせてたけどさ。

 それもそれであのギャルごときに見破られたってことが恥ずかしいじゃねーか。クッソ、迂闊だったなぁ。

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