3
遠かった。すんごく遠かった。こんなことなら途中からでも特急に乗るんだった……。しっかし、いい立地のトコに住んでるよなー。駅から徒歩5分のわかりやすいトコの一軒家。しかもデカい。さぞかし両親はいい職に就いてんだろうな。
インターホンを押して誰か出て来るのを待つ。「はーい」と返事する声とともにスリッパをパタパタと鳴らす音がする。多分、アイツのお母さんだろう。ドアが開き、初対面であることも含めて丁寧にあいさつをする。
「あらあら、本庄翼雲女子の制服じゃない。あの子にこんなお上品なお友達がいたなんてね」
「お見舞いに伺ったのですけれど、よろしいでしょうか」
「うーん、正直よろしくはないんだけど……あなた、予防接種は済ませた?」
「はい。学園のほうで毎年受けさせてもらえるので大丈夫です」
「それなら大丈夫かな。落ち着いたとは言え、まだ油断できない状態だから気をつけてね」
用意してもらったスリッパに足を通してからようやく気がついた。茶色のパンプスがスミに二組あることに。
「あの……もしかして先客がいらっしゃいます?」
「うん、いるのよ。でも気を遣わなくていいと思う。ふたりとも愛里の幼馴染で、言葉遣いや見た目はチャラチャラしてるけど、根はホントにいい娘たちだから」
「はあ……わかりました」
「なになに、あなたはウチの子みたいなギャルっぽいのがタイプなの? そういうことならオバサン、応援しちゃうわよ♪」
あからさまにため息をついてしまったせいで、一発でアイツが好きなことをアイツの親にバレてしまった。
「ち、違いますっ。愛里さんとはいい友達の関係ですっ」
マヌケもマヌケ。大マヌケすぎる。体中めちゃくちゃ熱い。
「まあまあ。そんな顔を真っ赤にしないで。部屋はね、階段を登ってすぐ左に折れた先の突き当たりだから」