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一方その頃――――隠れの樹海内・古の城

ちょっと息抜き。

短いですが、どーぞ。


しっかし、寒いし手が冷たい。エアコン頑張れ!

皆様も、寒さに負けずに頑張って下さいね。

 樹海を西へ向かうと、謎の石柱群がある。

 下草の生い茂る藪の中に、大小様々な石の柱が二重の円を描いてひっそりと佇んでいる。

 樹海を探索する者や狩人などはその石柱群を見つけて、古代の神殿や人里の跡だと夢想するが、本当の所を知る者は―――僅かにいる。


 今、その二重円の中央に二人の男女が立ち、女性の掌大の緑柱石(ベリル)を二人で握って何事かを唱えていた。

 壮年の男は、恰幅良く富裕層の出に見えるが旅装束のような簡素な風体で、女の方は、飾り付けた豪華なドレス姿ではなく、落ち着いた色合いの普段着程度の装いだったが、洗練された貴婦人であることは見て取れた。


『我らは契約者。光と闇を共有する者。緑の王よ。我らの前に扉を開かん。我らを誘え』


 朗々と通る声で男が文言を唱え、女がベリルに魔力を注ぐ。

 そして、二人の姿は一瞬の内に消え去った。



「聖女が怒っとるのう」


 真っ白な蓬髪と髭の老人が、巨大木の根で編み上げられた椅子に埋まり、茶席に座る男女に告げた。

 のんびりと穏やかな口調に、男は心なしか眉を下げ、女はきりりと凛々しい眉をいっそう吊り上げた。


「アレを王にするのは、まだ早かったようね?」

「…あそこまで采配下手とは思わなかった…器はデカいと思ったのだがなぁ」

「ええ、大旗を広げるのは上手ですけど、畳むのは相変わらず下手ですわ。腐っても玉桃(ぎょくとう)と言いますけれど、腐ってしまえばやはり屑!塵!」


「アンジェリカ嬢…そういきり立つでない。ぬしの代わりに聖女が怒っとるから心配せんでよい」


 二人の前に、老人の従僕が香り良いお茶を出した。

 花のような甘さとハーブの爽やかさが辺りに広がる。男が嬉々としてお茶を口に運び、花の香りのする酒が少量入った茶に和んだ。

 アンジェリカと呼ばれた女もその茶を嬉し気に堪能し、「はぁ~」と声に出して吐息を漏らす。


「良い嫁が来てくれると喜んだのもつかの間、これでは逃げられますわ」

「いっそアレを下ろして、彼女を…」

「馬鹿な事をおっしゃらないでっ!彼女が可哀想でしょう!!アレの尻拭いをさせるなんて!」

「いい嫁になってもらえると思ったのだがなー…はぁ、どうしたもんか…」


「先達てまでは、泣くほど好いていた様子じゃったがのぅ。今はどうじゃろうのぅ…」


「ああああっ!こんなことならアレックスの計略に乗って、さっさと養女に迎える話を進めておけば良かったわっ!そうしたら、貴族共も大人しくしていたでしょうに!」

「ああ、ぬかったな!」


 拳を握って悔しがっている壮年の男女を眺め、老人は薄笑いを浮かべた。


「やっと旨い物を作れる若い美人さんが来たんじゃ。そうは簡単に渡さんわ…阿呆共めっ」


 老人の小さな呟きは、横に控えた従僕にしか届かなかった。

 そして、その従僕は心の中で聖女に詫びた。……詫びるしかなかった。


※世界観知識(笑)

大旗(大戦の時に掲げる大国旗)=大風呂敷

玉桃(神の桃と言われる希少な果実)=鯛

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