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プロロロローグ 墓場と銃声。

ザリ……ザリ

とある郊外の墓場で、

一人のスーツの男の背中が目の前のものを恐れるように後ずさりする。

その真正面にいる屈強な、異常に背の高い大男が、その男の顔をわしずかみにする、


(これで、終わり。……)

男は、右ポケットに入っている、何かしらの狂気を取り出そうとした、

しかし、その形が判明するよりも、屈強で、馬鹿力の大男が、その頭をにぎりつぶそうとする力の

ほうが早かった。

(もう少し……時間をくれ。)

男は、最後の力を振り絞って、叫んだ

『うそだあああ!!!理不尽じゃないかああ!!』

その顔は、夜の闇ではっきりと見えなかったが、

墓場近くに止められた車のヘッドライトがあたりを照らし、

少しだけ見えた顔は、とても、普通の形をした人間とも思えなかった。

骨がむき出しになっている、肌の色は、生きているもののそれではない、薄い緑色の体色をしてる。


『伝えたはずだ。

我こそはヴァンパイア伯爵の子孫だ。

お前の永遠はすでに役割を終えた。

私こそが絶対の“法”なのだ、そういう契約だ。』


とっさに男は、頭を庇おうとして、大男のその、右腕に爪を立てる、

大男はひるみもせず、そして、傷口はみるみると回復していく

『虚しくは……ないのか。これからも、一人……』


大男は、その瞬間、逆上したような顔になって、一気に顔を真っ赤にさせて

左の、丁度灯りが照らしている左目をこれでもかというほど、力任せに開いて、

一瞬で男を“処理”した。


その男が頭を撃ち抜かれて、地面に倒れるまで、

最後にみたもの……大男の左の目玉は、銀色をしていた。

男が崩れ去るとき、世界はスローモーションで動いていた。

まるで、その時間が永遠に感じられるように、


 永遠の命を欲して、彼に助けをこうものたちは、こうしていつも彼の餌食になる、

彼の遺体は、頭を小さな拳銃で

打ち抜かれて、埋められた。

銃声は、乾いた音をたてて響いた。

時期は丁度冬ごろの事で、やたらに霧がかかっていた。


大男は、自分の殺した……場合によっては、壊したといってもかまわない、

静かに音をたてながら、崩れ去るだけの肉塊をみつめていた。


彼は、そもそもが、打ち抜かれたときにすでに死体だったのだ。


『お前との、約束は果たされた……。』

ヴァンパイアは、そのナナシたちの墓のそばにに、そいつを埋めてやった、きちんと

新しい墓標をたてた。

辺り一面墓場、かろうじて、随分まえにつくられた囲いが、朽ちずに、彼らを守っている。

(なぜここに埋めたのか。)

ここには、変わった墓守がいるからだ。


大男は、立てた墓標をみつめて、また悲しそうな顔をしている。

(なぜ、あたりまえの幸福ではいけなかったのか、だが……)

『所詮これがお前らにとっての永遠……。』


ヴァンパイアは、薄暗く無気味な場所、それも夜で、

無造作にたてられれた墓標をさけてあるき、その場を後にする。

車道へは、そう遠くはない、掃除されていない雑草が道を阻むだけだった。


白い息を吐きだして、車に乗り込む、

誰も見た事もないような高級車だった。


ヴァンパイアの、その屈強な男の脳裏に、とあるひとつの記憶がよみがえる。


さっきの男よりも、病弱で、細い腕の、友人の顔。

――『鏡を見てみろよ、ひどい顔しているぞ、そんなひどい妄想は、お前にはにあわない、

“目を覚ませ”』


『うっ』


大きな掌で、こんどは自分の頭を抱え込み、そして、まるで奇妙な甲殻類のように

彼は背をそらして、少しの間そのまま

運転席で顔を隠し、少しの間動こうとしなかった。


大きなコートに、膝下までありそうな茶色のブーツ。

機用な仕事ができそうにない両手の厚い手袋。

その男の格好は奇妙だった。

そして、よくみるとその男も、常人と同じ顔色をしてはいなかった。


後部座席には、まるで前時代的な、鈍器や武器がずらりと、並んでいた。


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