ある女生徒
同日 八時四十分 第二等魔法士育成学園
自転車を全力で漕いだぐらいのスピードというのは存外速いもので十分で着いてしまった。ちなみに、入学式は九時から始まる予定である。
完全に到着が早い。十分前ぐらいなら仕方ないと言えなくないが、二十分前は早すぎた・・・・・・俺がそのまましまったという表情をしていると、同じ制服を着た女性が近寄ってきた。
高校三年生以内だから、女子なことがわかっているのに女性と表現してしまったのは、彼女の大人びた雰囲気による物だ。
彼女は黒髪ロング、スラっとした長身で、生徒会長が似合いそうである。
「ん?君なにしているの?ひょっとして彼女と写真撮影?」
興味津々なのを隠さず、彼女は言った。これは完全に面白がっている。
大人びた雰囲気なんてなかった。
俺は心の中で残念さを叫ぶ。だがしかし、先輩は腕に『生徒会』とかかれた腕章を着けているので、生徒会の人間ではあるようだ。生徒会、大丈夫か。
「早目に着いてしまったのでどうしようかと思っていた所です」
「普通にみんな入って行っているよ?」
「教えてくれてありがとうございます」
俺はぺこりとお辞儀をしながら校門をくぐろうという時、女性に耳元で囁かれた。
「ご入学おめでとう一くん。私は君が生徒会に属するのを待っているよ」
俺は一沫の驚きを覚えながら校内へと入っていった。
何で俺を一家の人間だと解ったのだろうと考えつつ、校舎を何となく見上げる。すると、やはり持つ感想は広いということだ。
もちろん広いのは当たり前だ。魔法士育成は重要なことだからな。
なぜ重要な存在なのかといえば、物理攻撃が効かない魔獣というのが多く数存在し、攻めて来る魔獣からの防衛の要になるからである。
それに、魔法士が今まで使っていた兵器を使いこなせるようにすれば、その兵器+魔法ということが出来る。そのため魔法士というのは強さが確約されている兵士でもあるのだ。
閑話休題。校舎は三棟+一棟+一棟といった構成になっていて前述したとおり広い。
だが、うち一棟は小型の三階建て家のような大きさをしており、なにに使う所なのかがさっぱりわからない。なにをやる所なのだろうか。
俺は考え事が増えたなと思いつつ、所定の教室へと向かった。
専用アプリ――学園の敷地が広過ぎるため、専用アプリで敷地内の目的地に辿り着けるようアプリがある――の親切な案内の元、教室前に辿り着いた。