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SCENE05
真っ白な壁、真っ白な天井、真っ白なベッド、シーツ。ここは病院だ。
「…ああ、」
私はやっぱり死ねなかったのね。
「果物ナイフでなんて、思い切ったことをしたね。なっちゃん」
嗚呼、これが幻聴であってほしい。
「君は、国家の未来を背負っているんだよ」
神様、神様、あなたはなぜ私のことを救ってくれなかったの。
「裕、…」
会いたい。
あいたい。
「もう彼はいないよ。傷が治るまでゆっくりしていなさい」
胸が痛い。
切り裂かれるような痛みが走る。
そういえば裕の部屋で、お見舞いの果物かごのそばに置いてあったナイフを握った覚えがある。それで胸を刺したことも。死のうとしたのだろうか。
覚えていない。
「裕」
遠くに裕が見えた。
私に手を振っていた。
「あいたいな」